10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:14:53.12 ID:wq3gp6Kw0
 目を覚ますと、いつもの見慣れた天井が見えた。 
  
 隣に和ちゃんはもういない、わかってる。 
 この3ヶ月くらい毎日のように思い知らされた。 
 よく寝た。それでも、まだ9時くらいだと思った。 
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:15:19.73 ID:wq3gp6Kw0
 とんでもないことになった。 
 ガバッ、と起きて、ドタバタと着替える。しまった、着ていく服を用意していなかった。 
 どうしよう。部屋に散らかった服の中からよさそうなのを選んで着た。 
 口からは「あわわわわわ」という声しかでない。 
  
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:16:39.12 ID:wq3gp6Kw0
 どうして私は最後の最後までこうなのか、と走りながら思う。 
 クロワッサンが邪魔だった。欲張るんじゃなかった。 
 小麦粉の変なすっぱみで、口の中がいっぱいになる。 
  
 運動不足で、しだいに痛みだす足と肺に、 
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:18:16.28 ID:wq3gp6Kw0
 それでも、この道をまっすぐいえば、会えると思った。 
 いつも待っててくれたから。私のこと。 
 「ほら、唯」って言ってわらってわらってわらって、 
 私に手をさしのべてくれたから誰よりも、 
 和ちゃん、私はね、和ちゃんがすきなんだよ、ごめんね? 
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:19:00.51 ID:wq3gp6Kw0
  
 だけど、そのエゴがなきゃ、今、私は走れない。 
 たとえば、もう走るのもやめて、CDを和ちゃんに渡すことも諦めて 
 今すぐに来た道を戻ることだってできる。 
 そっちのほうが、運動不足の足と肺にとってはとっても魅力的だった。 
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:19:59.34 ID:wq3gp6Kw0
  
 いつの間にか、泣いていた。 
 泣きながら走る私は、端から見たらさぞかしこっけいだったろうな。 
 はなみずも出てたし。 
 和ちゃんが、行ってしまう。1人でいなくなってしまう。 
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:21:43.76 ID:wq3gp6Kw0
  
 駅についたのは40分くらい。 
 足はもうガクガクに震えていた。 
 財布から小銭を取り出す。ばらまく。 
 私はここぞという時に、お約束を守るとっても良い子だ。 
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:22:31.97 ID:wq3gp6Kw0
 階段を駆け上って、ホームに出た。 
 肩で息をしながら、和ちゃんの姿を探す。 
  
  
 いない。 
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:23:22.48 ID:wq3gp6Kw0
 和ちゃんは、いた。 
 下りではなく、上りのホームに、驚いた顔をした和ちゃんが、いた。 
 私たちは向かいあうように、お互いの姿をその瞳に映しあった。 
  
 ホーム、間違えた。階段、駆け上がらなくてよかった。 
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:24:36.13 ID:wq3gp6Kw0
 必死に叫んだ「和ちゃん」という言葉は 
 「白線の内側までお下がりください」という音にかき消された。 
  
 和ちゃんも私にむかって何か叫んだ。 
 それも、「白線の内側までお下がりください」という音にかき消された。 
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:26:02.07 ID:wq3gp6Kw0
 そのとき 
  
 「唯っ!!!」 
  
 という、和ちゃんの声が聞こえた。 
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