14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:19:00.51 ID:wq3gp6Kw0
  
 だけど、そのエゴがなきゃ、今、私は走れない。 
 たとえば、もう走るのもやめて、CDを和ちゃんに渡すことも諦めて 
 今すぐに来た道を戻ることだってできる。 
 そっちのほうが、運動不足の足と肺にとってはとっても魅力的だった。 
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:19:59.34 ID:wq3gp6Kw0
  
 いつの間にか、泣いていた。 
 泣きながら走る私は、端から見たらさぞかしこっけいだったろうな。 
 はなみずも出てたし。 
 和ちゃんが、行ってしまう。1人でいなくなってしまう。 
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:21:43.76 ID:wq3gp6Kw0
  
 駅についたのは40分くらい。 
 足はもうガクガクに震えていた。 
 財布から小銭を取り出す。ばらまく。 
 私はここぞという時に、お約束を守るとっても良い子だ。 
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:22:31.97 ID:wq3gp6Kw0
 階段を駆け上って、ホームに出た。 
 肩で息をしながら、和ちゃんの姿を探す。 
  
  
 いない。 
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:23:22.48 ID:wq3gp6Kw0
 和ちゃんは、いた。 
 下りではなく、上りのホームに、驚いた顔をした和ちゃんが、いた。 
 私たちは向かいあうように、お互いの姿をその瞳に映しあった。 
  
 ホーム、間違えた。階段、駆け上がらなくてよかった。 
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:24:36.13 ID:wq3gp6Kw0
 必死に叫んだ「和ちゃん」という言葉は 
 「白線の内側までお下がりください」という音にかき消された。 
  
 和ちゃんも私にむかって何か叫んだ。 
 それも、「白線の内側までお下がりください」という音にかき消された。 
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:26:02.07 ID:wq3gp6Kw0
 そのとき 
  
 「唯っ!!!」 
  
 という、和ちゃんの声が聞こえた。 
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:26:52.89 ID:wq3gp6Kw0
 その後は、とっても恥ずかしかった。 
 ホームでひとしきり泣いて涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、 
 駅員さんにお金を渡されながら、怒られた。 
  
 「でへへ」と、自分の失態に笑うしかなかった。 
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:27:26.93 ID:wq3gp6Kw0
  
 お互いに嫌いになって、はなればなれになったわけじゃない2人には、 
 こんな別れ方がよかったのかもしれない、と 
 今は、少し思う。 
 思えるくらいには、なった。 
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:28:54.83 ID:wq3gp6Kw0
  
  
 大学生になって、和ちゃんと、はじめてはなればなれの夏をすごす。 
  
 それでも私は、ふとした時に、いつだって 
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/01(金) 23:40:14.31 ID:g4cOuF0H0
 乙です。 
 和ちゃん視点に続いての唯視点、素敵でした。 
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