過去ログ - 美琴「極光の海に消えたあいつを追って」2
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892: ◆nW2JZrx2Lo[saga]
2012/03/10(土) 04:20:04.94 ID:fiKeJx/Ho

「ぐっ、がァああああああああッ!!??」

 喉が裂けるのではないのかと思うほどの、つんざくような悲鳴が『油性兵装』の喉から漏れる。
彼女が纏う絶大な防御力を誇る液体と固体の区別すら曖昧な特殊複合装甲は、今や奇妙にボコボコと歪んでみえた。

どんな形で扱うにせよ、形状・性質を変化させるならば液状にしてしまうのが最も扱いやすい。
『破城槌』を受け止めた『油性兵装』は、一度それを液状化させ装甲へと取り込もうとした。

取り込むと言っても十数メートルもの大きさである『破城槌』の質量は余りに大きすぎ、そのまま全て装甲に取り込むわけにもいかない。
一瞬だけどうするべきか悩み、液状化した『破城槌』はその刹那形状を保ったまま装甲に一部をくっつけてその巨躯を晒していた。

『油性兵装』は一方通行に触れられることを極度に恐れていた。
いくら強靭な防御力を誇る装甲を持とうとも、ベクトルを操る一方通行に対しては紙切れに等しい。
ましてや今、『破城槌』は『油性兵装』の装甲と混じり合い一体化しているのだ。
その巨体に触れたならば。そのベクトルを操作したならば、それは装甲そのものに対する干渉すらも可能になるのではないか?

その答えは『油性兵装』本人が身を持って味わっている。
彼女が誇る絶対の鎧は、今や彼女を捉え戒める絶対の拘束服となった。
肉を縛り骨を砕く痛みに苦悶の表情を浮かべ絶叫しながらも、それでも彼女は戦意を捨てようとはしない。

「あ、が、ぐ、っらああああああああああああああああああああッ!!」

 奥歯を噛み砕かんとする勢いで絶叫を引きちぎり、『油性兵装』は力を込める。
足元のオイル溜まりから伸びた黒刃によって『破城槌』が切断され、ようやく彼女は自由を取り戻した。
後方へと跳んで距離を取り、同時に全てのオイルに着火する。

もう幾度目だろうか、酸素を喰らう紅蓮の炎と視界を奪う漆黒の煙が渦を巻き、空間を蹂躙する。
その高熱は全ての物を焼き払い、低下した酸素濃度はあらゆる生物の呼吸を困難なものとする。

だが、そんなことはもう一方通行には関係ない。
先ほどの一撃で大きなダメージを与えた。機動力も大分削いだだろう。
流星のごとく煙から飛び出しつつ、なおも後退する少女目がけて拳を振りかぶる。

「病院のベッドの上で、自分の身の振り様を気が済むまで考えやがれ!」



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