過去ログ - 美琴「極光の海に消えたあいつを追って」2
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938: ◆nW2JZrx2Lo[saga]
2012/04/04(水) 03:01:10.29 ID:KuXo2uTOo

 床材が砕ける音がした。
一方通行がその拳で床を思い切り殴ったのだ。
そこから得た運動エネルギーを操作し、後方へと跳ぶ。
空中で身を翻し、そのまま『ミサカ』に背を向け逃げ出した。

自らの荒い息の音が嫌に大きく聞こえる。
その原因は彼が背後に置き去りにしてきたもの。

覚悟はしていた。
番外個体に警告は受けていた。
その言葉の意味をもっと吟味するべきだった。


     『侵入者たちを排除できるだけの力を持った軍隊があって、しかもそれに対して自由に命令できる。だったらさ、それを使わない手はないよねぇ?」


2か月近くに及ぶ、彼女との付き合い。
それが彼の記憶を半ば風化させかけていた。

彼女は元々何のために一方通行の前に現れた?
学園都市は何を企んだ?
そして、彼女を前に一方通行は何を思った?

(怖い)

 本能の奥底に眠る感情。
最強の存在である自分が幾度も感じた事のない感情。
それが自身の心をどれだけ縛りつけ、爪を立て、ぎりぎりと締め付けるか。
それを、甘く見過ぎてはいなかったか?

空気を切り裂く音がしたような気がした。
直後、彼の左腕を何かが貫いていった。
焼けるような鋭い痛み。一瞬だけ演算が狂い、彼は空中でバランスを崩した。
どうして、と思う暇もなく、ほとんど耳元ではないかと思うほど近くから『ミサカ』の声が聞こえた。

「逃がすと思いますか?」

 いつの間に追いつかれたのか。 
振り向くと、彼女は『ティルフィング』を左の逆手に持ち、右の拳を思い切り振りかぶっていた。
殴り飛ばされる。そう思い反射的に腕で顔面を庇おうとするが、訓練された人間から見れば彼の動きは緩慢に過ぎる。
彼のガードをすり抜けるように、『ミサカ』の拳は一方通行の顔面を捉えた。



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