過去ログ - 美琴「極光の海に消えたあいつを追って」2
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937: ◆nW2JZrx2Lo[saga]
2012/04/04(水) 03:00:16.43 ID:KuXo2uTOo

 疲れた体を休めるかのように目を閉じた『油性兵装』に背を向け、『ミサカ』は一方通行に向けて身体を向ける。

「──納剣」

 『ミサカ』が小さく呟くと、天使の翼を模した剣はくるくると剣身を丸め、1メートルほどの筒状へと姿を変えた。
その表面は金色の印字を覗いて純白であり、それが剣に変形するとは思わせないほどすべすべとしている。
落下防止のためだろう一端に取り付けられたストラップを持ち、それを軸にくるくると『ティルフィング』を振り回しながら、『ミサカ』は一方通行の前に立った。

「……どうせ意識はあるのでしょう? 狸寝入りは無意味です。
 背骨や肋骨はあえて切断しなかったのですから」

 彼女が見下ろす先には、一方通行が倒れている。
だが、その周囲に先ほどまであったはずの血だまりはなく、赤く染まっていたはずの裂けた衣服は元の色に戻っている。

血液のベクトルを操作し、自らの体内へと戻したのだろう。
出血時に混ざった異物や雑菌は彼の能力が選り分け、排除することで混入は防がれる。
つまり、意識がある=能力が使える限り彼が失血死することはない。

だが、それは同時に彼に能力の常時使用を強いることになる。
能力の使用時間に制限を持つ一方通行は、電極のスイッチをオン・オフすることで制限時間を伸ばそうと努力してきた。
しかし、これからはその手段を取ることはできず、仮に取ってしまえば再び大量の血液を流失することになる。

すなわち残る制限時間、およそ10分程度が彼の寿命。伸ばすことは不可能。
『油性兵装』の残した戦果は、彼我の戦力差に対して余りに大きい。

のろのろと一方通行が上半身を起こす。
その瞳に『ミサカ』の姿を映す。
だが、そこに先ほどまでのような、戦意はすでに宿ってはいない。
そこにあったのは、怯えと恐れ。

「無様な顔ですね。学園都市最強の超能力者らしくもない。
 もっと傲岸かつ不遜に笑ってみたらどうですか?」

 そんな彼の心に食い込むように傷口を抉るように、『ミサカ』は言葉を紡ぐ。


     「楽しそうに"ミサカたち"をバラバラに引き裂いていた時のように」

 


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