過去ログ - インデックス「――――あなたのために、生きて死ぬ」
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899:天使編B[saga]
2011/09/11(日) 20:26:11.18 ID:S9t1RThW0


思い起こせば十一年前。

いや、そろそろ十二年前になろうとしてるんだ。

『私』の最初の記憶は頭上で電球の光を遮る、赤髪の魔術師の苦悶に満ちた貌だった。


「出会って最初の一年間は苦手だったの。
 …………ううん違う、き………………嫌い、だった」


当然といえば当然だ。

悪気なく聞いてくるみことやしずりには口が裂けても言えないが、

自分の命を狙ってくる――少なくとも当時の私はそう信じて疑わなかった――

“魔術師”に、いったいどうやって好感など抱けというのか。

しかし今、たった三文字の言葉を絞り出した私の心は千々に乱れていた。


「あー…………どうにも、悪い事聞いちゃったみたいね」

「そんなことないよ、みこと」


嫌な思い出に向きあう事も、時には必要だ。

今にしてあの頃を回想すれば、私を延々と追跡しては

適度なタイミングで襲撃する彼やかおりの胸中は察するに余りある。

それにすているを否定した舌に残るほとばしるような苦みは、

現在の私がどれほど彼を好ましく思っているかを教えてくれる格好の試験紙だった。




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