過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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466:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/08/14(日) 21:08:19.28 ID:0rnOj66AO
〜22〜

交差点の横断歩道に横たわるゼブラを踏みつけながら狐と獅子は夜を行く。
ところどころで警備員が巡回しているが構う事なく歩を進める。
ダークグリーンやアイスブルーの輝きが彩る夜の中、ビュウビュウと吹き抜ける風がプロペラを回す。
それを見上げる麦野にはやはりそれが墓標か十字架のように見え――
対する傍らの上条にはそれが『道標』のように思えた。

上条「お姫様か……俺、王子様ってガラじゃねえんだけど」

麦野「王子様って言うか駄馬ね駄馬ね」クスクス

上条「とうとう人間ですらなくなった!?」

麦野「家畜にも向かないし奴隷にも使えない。まあ馬繋がりで馬子にも衣装の王子様でいいよ」ケラケラ

上条「覚えてろよ……」

鏡張りのビルに映る互いの微笑。麦野は麦野なりに今日という一日を楽しんだのだ。
今まで両親に遊園地に連れて行ってもらった事など一度たりとてなかった。
上流階級の人間の宿業と言ってしまえばそれまでだが、余りある金と物を与えられる中――
麦野は『思い出』だけが与えられなかった。家族の『記憶』だけが欠けていた。

上条「でもお前も変わってるよな」

麦野「何がよ?」

上条「デートの時は一緒に出りゃいいもんを、わざわざ待ち合わせにするし帰りは別々だし」

麦野「テメエは本当に頭悪いな。こういうのってムードの問題でしょ?」

麦野は語る。他の半同棲カップルがどうかは知らないが、常に一緒だとどうしても糠味噌臭いのだ。
一緒の家から出るお出掛けはどことなく買い物に行くような気分の延長でもから抜けきらない。
麦野にとっては誘ったり誘われたり、待ったり待たされたりという『時間』が大切なのだ。
別れた後一人の帰り道、その日一日を振り返って余韻に浸るという事。
生活感が滲み出るのは仕方ないにせよ、それが関係性にまで染み付くのを麦野は嫌う。

麦野「まあそれも寝る前まで何だけどさ。今日はせいぜい12時くらいかにゃーん?」

上条「あと二時間しかねえじゃねえか!」

麦野「――でも、想い出はずっと残るよ。心にね♪」

上条「うっ」

麦野「かーみじょう?」

そういう糠味噌臭い生活は、もう十年ほど先送りにしたって良いではないかと。
それこそ父親に似た面倒臭がり屋か、自分と良く似て負けん気の強い子供に手を焼きくような未来は。




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