過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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◆K.en6VW1nc
[saga]
2011/09/10(土) 21:00:23.19 ID:42BNj/aAO
〜2〜
御坂「……それにしても本当にビックリさせられたわ。あんたがそんな大怪我してる所なんて初めて見た」
有り得ないと御坂は思った。このプライドが服を着て歩いているような相手が……
車椅子姿で人前に、それも自分の前に出て来る事そのものが怪我以上に有り得ないと。
そのくせ何があったか一切語らないスタンスだけがいつも通り麦野のままで、そのギャップに御坂はひどく戸惑った。
御坂「……あんたってさ」
麦野「なんだよ」
御坂「聞いた事は答えてくれないし、自分の事はちっとも話してくれないし……私ってばそんなに信用ない?」
白井「(お姉様が何やら切なげな横顔をなされておりますの……って思いっきりそっぽ向いてますのォォォォォ!!)」
溜め息をついて憂いの表情を浮かべる御坂を麦野は顔を横向けて目線を合わさない。
代わりに、ガラスに映った御坂の横顔と真っ直ぐな言葉に耳を傾けていた。
御坂「そのくせこんなメールでいきなり呼び出して来るしさ」
膝の上に畳んで抱えた麦野のオフホワイトのコートに置いた携帯電話を開いて見せる。
その画面には一通のメールと素っ気ない一文が映っていた。
――――――――――――――――――――
10/8 11:19
from:麦野さん
sb:コート返せ。
添付:
本文:
あと渡したい物あるから来て。いつもの病院
――――――――――――――――――――
白井「(お姉様を都合のいい女扱いしておりますのー!?)」
麦野は語らない。断崖大学での出来事も、負傷の理由も、美鈴との約束も、何一つとして。
事情を知る上条は既にアビニョンに飛び立ちインデックスにはしっかりと口止めしている。だが
麦野「――リハビリよ」
御坂「リハビリ?」
麦野「そう、リハビリ」
百合を敷き詰めた硝子の棺から抜け出し、『眩しい世界』への社会復帰(リハビリ)の第一歩として――
麦野は御坂を選んだ。好意とはまた異なる類の信頼の裏返しとして。
御坂「(……そっか)」
白井「!!?」
その時、御坂がふっと抜けたように微笑んだ。
側で見ていた白井がギョッとするほど、優しく爽やかで晴れやかな笑みを。
御坂「(覚えててくれたんだ)」
10月2日の夜、御坂から歩み寄り、手を差し伸べた手を、かけた言葉を。それが御坂の心根を解きほぐす。
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