過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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850:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/09/17(土) 21:18:23.83 ID:W55C2CfAO
〜14〜

キッ、と浜面は道路端に車を横付けしバンを停めた。
これ以上気もそぞろに滝壺と接していては運転も誤りかねないと判断して。
その横をもちろん何も知る由もない学生らが通り過ぎて行くばかりだ。

滝壺『なに?はまづら』

言葉が出て来ず、声にならず、意味を為さない短い沈黙が続いた。
真っ黒なバンへチラと横目を向けて来たツインテールの少女の姿がミラーに映るも、すぐさまシャンパンゴールドの髪の先輩らしき少女に呼び掛けられ走って行くのが見えた。

浜面『……俺も、滝壺と同じような事考えた』

滝壺『はまづらも?』

浜面『ああ、まだ返せてないあのジャージを見る度に……またいつか会えるかって、ずっと滝壺の事を考えてた』

まるで告白のようだ、と浜面はそんな自分を内心で窘めた。
滝壺は表情から察するのがやや難しいタイプではあるが――
少なくとも今の会話から『差別される側』だった浜面に対し……
人間として好意を抱いてくれたのだと言うニュアンスを感じ取れた。

浜面『俺さ、滝壺に会う何時間か前に同じレベル0に言われたんだ。“助けが欲しいってならテメエは誰かを助けた事があんのか”って……』

滝壺『……うん』

浜面『最初は何巫山戯けた綺麗事言ってやがんだこいつって思ったさ。そりゃテメエが出来るだけの強さと立場がある成功した側の人間だろうがって』

故に浜面は取り繕う事をやめた。さりとて偽悪的に振る舞うでもなく露悪的に話すでもなく――

浜面『こうも言われた。“テメエはいつも他人ありきじゃねえか。テメエ自身はどこにいる”って』

滝壺『……はまづらはここにいるのにね』

浜面『――ああ、その通りだクソッタレ』

居場所という立ち位置を挟んで似通う滝壺と浜面を隔てるもの……
それは揺るがず流されぬ『自分自身』を有しているか否か。

浜面『そんな当たり前の理屈さえも……駒場(あいつ)らがいる時はそん中に埋もれて、アイツ(駒場)らがいなくなってからは自分を見失って』

鳥の巣を育むように居場所を作れどそこに『己』だけがいない。
更に今も浜面は『誰かが作り出した流れ』の中に放り込まれている。だが

浜面『……でも、滝壺を助けた時わかった』




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