過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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861:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/09/17(土) 21:33:06.84 ID:W55C2CfAO
〜22〜

麦野「(……おかしなもんね。袂を分かった人間とこうして膝交えて顔を突き合わせてるだなんて)」

滝壺「(むぎの、変わったけど変わらないね。でもこうして久しぶりに見ると何だか知らない人みたい)」

麦野「(……何て言えば良い?どんな顔すりゃ良い?)」

滝壺「(聞きたい事、話したい事、知りたい事、いっぱいあるな)」

麦野「滝……」

滝壺「むぎ……」

麦野「………………」

滝壺「………………」

麦野「あんたから」

滝壺「むぎのから」

麦野「〜〜〜〜〜〜」

滝壺が横たわるベッドサイドに置かれたパイプ椅子に腰掛けながら麦野は小刻みに肩を震わせた。
入室より見交わしたまま数分、二人はこの有り様であった。

麦野「……何であんたがあの団子鼻ピアスと一緒にいんの?」

滝壺「なんでむぎのまで入院してるの?かみじょうのこっこ出来たの?」

麦野「おいコラ。私はジョークが嫌いだってもう忘れたのかにゃーん?」

滝壺「ジョークじゃなくて真面目に聞いたのにな」

麦野「余計タチ悪いわよ!!」

滝壺「でも良かった。むぎのが元気そうで」

麦野「……元気じゃないのはあんたの身体の方でしょ?」

滝壺「うん……」

枕に顔を横向け仰臥する滝壺が黒真珠を思わせる双眸を麦野へと投げ掛けて来る。
どうして私がここにいるのがわかったの?どこまで私の身体の事をわかっているの?と。
しかし滝壺は自然とそれが受け入れられた。如何に袂を分かち道を別ったと言えど――

滝壺「そうだったね。むぎのは昔から私達の事みんなお見通しだったもん」

麦野「……そうでもない。こんな眼鏡かけなきゃいけない程度には目が悪くなったわ」

滝壺「そう?でもむぎのの目、昔よりずっとずっと……優しくなった」

麦野はいつだって自分達より遠く、深く、鋭く、冷たく物事を見極めて来た。
それを思えば別段どうと言う事はなかった。語るべきところはそこではないとも。

滝壺「――今も」

麦野「!」

滝壺「私の事、心配してくれてる。わかるよむぎの」

滝壺の低い体温を乗せた指先が、点滴を刺された白い手首が麦野の頬に触れる。
同性の目から見てさえ欠点の方が遥かに多いが、それでも嫉妬さえ起きない美貌を慈しむように。

滝壺「――私、もうダメみたい」

麦野「――……」

滝壺「もう、みんなの力になれないんだって……言われちゃった」




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