過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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◆K.en6VW1nc
[saga]
2011/07/14(木) 21:42:34.31 ID:1DwrXIIAO
〜27〜
美鈴の放った言葉と声音の響きはまるでこの夜風のように穏やかだった。
絶えずささくれ立った圭角を針鼠か山嵐のように突き立たせる麦野の鋭角さを――
そっと、あたたかいタオルで包み込むような優しさを秘めていた。
『優しさ』『穏やかさ』『柔らかさ』を忌み嫌う麦野の感性をもってしてもはねのけられないほどに。
美鈴「この子の友達も何人か知ってるわ。白井黒子ちゃん、初春飾利ちゃん、佐天涙子ちゃん……みんないい子よ、とても」
麦野「――でしょうね」
麦野が嫌う、ひだまりのように優しく綺麗な世界。
馴れ合いだと、群れ合いだと、凭れ合いだと鼻で嘲笑う集まり。
麦野はとどのつまり――『誰かにとっての優しい世界』が大嫌いなのだ。
それは励ましてくれたインデックス、促してくれた御坂など……『自分にとっても優しい世界』が許せないのだ。
美鈴「でもその中で……悪口を言って、喧嘩をするって事は――本音を言って、本気でぶつかれるって事じゃない」
麦野「それは……!」
美鈴「それはもう、あの子達とも違う形での“友達”だと私は思うわ。こうして、介抱もしてくれ―」
麦野「違うっっ!!」
美鈴「………………」
麦野「……あっ」
御坂「むにゃむにゃ……」
その時一瞬、麦野は地金を晒した。出会ったばかりの赤の他人に。
上条当麻以外に見せた事のない、抜き身の脆い素顔が出てしまった。
麦野は否定したい。自分には愛した男がいて、それは今眠っている少女が恋をしている相手だ。
そんな……そんな間柄を、友達などと呼ぶ傲慢が麦野には受け入れられなかった。
麦野は元々高慢な性格である。しかしそれだけは許せなかったのだ。
美鈴「あはっ。やーっと本当の顔してくれた♪」
麦野「……な」
美鈴「美鈴さんもさー結構努力してんのよー。毎週屋内プールでばしゃばしゃ泳いだり、風呂上がりには体中に保湿クリーム塗ったくったりしてさあ。でもねー」
しかし――そんな頑なだった麦野の頬に、美鈴がピトッと手を添えた。
まだアルコールの残る顔をにまぁ……っと笑顔に変えて。
美鈴「その憎たらしいくらいピチピチの十代の素顔……もっと大切にしなよ?」
麦野「……!!」
美鈴「さっきまでのクールな顔より、ムキになった今の顔の方が素敵だよーん?うりうり♪」
今の麦野では真似の出来ない――『大人の笑顔』でツンと、麦野が打ちつけた鼻頭を押した
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