過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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◆K.en6VW1nc
[saga]
2011/09/26(月) 02:55:56.24 ID:UGeb9RnAO
〜〜
「まま!まま!おからだだいじょうぶ?どこもいたくない?」
「うん痛くないよー。ママはどこも悪くないからねー?」
「(学園都市最恐の鬼嫁も人の親かァ)」
幼い頃の打ち止めを思わせるタックルと父親を想わせる猪突猛進ぶりをこれ以上ないニコニコ顔で抱き寄せる母親。
まるで太陽に両手を伸ばすように、陽射しに目を細めるようにするその横顔は――
『ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・ね』
「(……頼むから中身まで似るンじゃねェぞ)」
「じゃあままどうしておいしゃさんにみてもらったの?おなかいたいの?」
「んー……お腹に違いはないけど痛くないかな。痛くなんのはまだずーっと先だよ」
「???」
「麻利」
頭に疑問符を浮かべ小首を傾げていた少女が床に下ろされ、変わって母親が長いスカートを擦らないようにしながら目線を合わせて屈み込む。
チラッと医師の方を見上げ、医師が少しの間を置いた後頷くと母親もまた頷き返し――
「――麻利はこれからお姉ちゃんになるんだよ」
「!」
「びっくりしたかにゃーん?」
少女の浮かべていた疑問符が感嘆符に変わり、傾げていた小首が真っ直ぐになってうんうんと何度も縦に振られる。
傍らでその様子を見やっていた医師は白衣と同化しそうなホワイトヘアーをガシガシとかき……
「やったー!おねえちゃんだ!!まりおねえちゃんになるんだ!!!」
屈み込んだ母親の頭を小さな手と細い腕でしっかりと抱き寄せ……
少女が生まれる前から家にいる三毛猫にするように頬擦りするのを医師もまた僅かに緩められたネクタイと同じく口角を上げた。
「……まァ、なンだ……」
「うん」
「――おめでとう」
「……ありがとう!」
「いえーい!」
母親の幼い頃を彷彿とさせながら、それでいてひだまりのような笑顔を浮かべて少女は医師にピースサインを送る。
すっかり写真が趣味になってしまった父親にカメラを向けられる度そうするように誇らしげに。
「――さあ、お家帰ろうか麻利?」
「うん!ねえねえあかちゃんどこにかくしてるの?いないよ?」
「お腹おっきくなってないからね。麻利ーそんなにさすってもまだ赤ちゃん出て来ないよー」
「――お大事にィ」
これから四人に増えた写真を撮りまくるであろう少女の父親を想像して、医師は笑った。
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