過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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◆K.en6VW1nc
[saga]
2011/09/26(月) 02:58:07.85 ID:UGeb9RnAO
〜〜
「で、相変わらず医者の不養生かよ鈴科先生。俺にも一本くれよ」
「もらい煙草たァ情けねえなオマエも」
「うるせえな。昼飯食っちまったら煙草代も残んねえんだよ」
「嫁に金玉も財布も握られて、次握られンのは命かァ?」
大破した救急車の査定に訪れたロードサービスの社員が一頻り見積もりを終えるのを医師は喫煙所から見やっていた。
吹かすキャプテンブラック・ダーククリームを寄越せと手を差し出して来るその団子鼻の社員の奥方はさぞかし切り盛り上手なのだろうと思いながら。
「仕方ねえっちゃ仕方ねえんだがな……二人目が来月小学校に上がるし、色々物入りだってのに管理職には残業代も営業手当てもつかねえし」
「もうそンなになるか。まァ結婚も出産もオマエの所が一番早かったしなァ」
地上へ至る地下道の側、霊安室近くに追いやられた喫煙者に厳しい時流に抗うように二人は煙草を吹かす。
チョコレートのほろ苦さとカカオの甘い煙が見上げる春の青空へと溶けて行く。
在りし日へ誘う朧気なノスタルジーを思わせるように。
「結婚って言えばあれだな、アイツらん時は本当ひどかったよな」
「あァ、海上ウェディングって聞いた時から嫌な予感はしてたンだ」
「魔術結社が氷の船で突っ込んで来てな……忘れられねえぜ。ドレス姿でビームぶっ放す花嫁なんて」
一度しか使われなかった霊安室。かつてこの病院にいたカエル顔の医者は一生涯死者を出す事なく天寿を全うした。
白髪の医師という後継者を得、その結婚式の仲人を務めた老人は『やっと向こうで旧い友人とコーヒーが飲めそうだね?』と思い残す事なく笑顔のまま命数を使い果たした。
最初で最後となった霊安室、そこは安らかな死に顔に彩られていた。
「……なあ」
「あン?」
「今夜飲みに行かねえ?アイツも誘って」
「煙草買う金もねェくせに何言ってやがる。だいたい今日アイツを誘ったら俺もオマエもあの鬼嫁にぶち殺されンぞ」
「理后に来月分前借りすりゃなんとか……ってなんでダメなんだ?」
「……面倒臭ェ。宿直もねェし俺ン家で飲むぞ。そン時話してやるよ、浜面」
「そりゃ助かるが、お前の方は嫁さん大丈夫なのか?」
「デキた女だからな。ただガキがうるせえぞ?」
――その死に顔に誓った思いを知るのは、この医師の伴侶のみ――
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