過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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990:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/09/26(月) 03:04:34.25 ID:UGeb9RnAO
〜〜

「ふんふふん♪ふんふふん♪ふんふんふーん♪」

少女は夕暮れの中、尾が二つに分かれそうな三毛猫をお腹に乗せてゲコ太クッションに頭を寝かせる。
母親をして『御坂のお姉さん』からのプレゼントである。

『最近疲れが取れなくてさ……お酒も抜けにくくなってんの』

『私より四つも下なのに何ババ臭い事言ってんのあんた。私なんてもうすぐ』

『もうそんなになるっけ?にしても……』

『……なに?』

『子供一人産んでるとは思えないスタイルよねあんたって。昔より数倍綺麗じゃない』

『麻利がお腹にいるってわかってからお酒飲まなくなったからね。それでじゃない?』

そんな母親の友人がくれるゲコ太のぬいぐるみ。
やがて生まれて来る弟か妹の遊び道具になるであろうそれは現時点では少女ただ一人の物である。と――

ガチャッ

「!」

「おかえりー」

「ただいまー」

「ぱぱ!」

回る鍵穴、傾ぐノブ、開くドア、聞こえて来る父親の声。
くつくつと湯気が立つ台所、射し込む西日、回る風車が運ぶ桜の花片。
子供部屋から三毛猫を抱えた少女がフローリングを滑るように駆けて行き

「麻利ー!捕まえたぞー!!」

「きゃー!」

「お疲れ様……ってオイオイ。スーツにスフィンクスの毛つくでしょ?ほら貸して」

「悪い、頼むわ沈利」

「ニャー!(生え替わりの時期なんだ仕方ないだろ!)」

それを抱き止める父親からスーツを受け取り三毛猫の毛をロールで取り除いて行く母親。
玄関に飾られたガラスの靴以外に、大中小と並ぶ靴。三人と一匹の家。

「ねえねえぱぱ!ぱぱ!ほらほらままもままも!」

「???」

「ふふふ……そうだったねえ?よし麻利、当麻……じゃないパパに言ってごらん?」

「だめだよ!ままもいっしょにいうの!」

「はいはい。パパ、ちょっと耳貸して?」

右から妻の、左から娘の耳打ちに表情が驚きから笑顔に変わり、二人をガバッと抱き寄せる父親。
それを見届けた三毛猫はトコトコとカッペリーニのソファーに戻って丸くなり、夕陽に照らされた写真立てを見つめる。

『さーて、これでめでたしめでたしかにゃーん?』

写真立てに写る笑顔。それは海上ウェディングの船上。

『ねえ――』

『20XX 7/7 上条当麻22歳 麦野沈利24歳』と刻印された――

『あ・な・た……』

空と海の狭間で花束を抱えたシンデレラがそこにいた――


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