過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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989:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/09/26(月) 02:58:37.69 ID:UGeb9RnAO
〜〜

「ねえ麻利?」

「なーにーままー?」

「麻利は男の子だと思う?女の子だと思う?」

「ん〜」

舞い散る桜並木の中を歩む母娘。降り注ぐ木漏れ日を受けて映える栗色の髪が風にそよいで行く。
繋がれた手から伝わる幼いぬくもりと見上げてくるあどけない眼差し。
その問いに対し少女はスパゲティにするかハンバーグにするか悩むように小さく唸り……そして

「どっちでもいいよ!おとこのことかおんなのことかかんけいねえよ!かぁんけいねえんだよぉぉ!」

「(嗚呼……子供ってやっぱり親を良く見てるわ。おかしいなあ麻利の前で夫婦喧嘩した事ないんだけど)」

「だってね?だってね?」

ヒラヒラと春風に踊る花片がちょこんと鼻に乗ったのを取り除くと、少女は再び母親のお腹辺りに顔を埋めて抱きつき……
かと思えば両手を目一杯広げて顔を上げ、にっこりと笑いかけて来たのだ。

「おとこのこでもおんなのこでも、おなじ“にんげん”だもん!」

「――――…………」

「ぱぱと、ままと、まりとおなじにんげんだからそんなのかんけいないよっ。まま!」

それに対し、母親も細めていた眼差しに涙が滲みそうになって――
笑顔に変える。子供の前で決してすまいと決めている事。
一つは子供の前で喧嘩をしない事、もう一つは嬉しくても悲しくても泣かない事。

「そうね。男の子でも女の子でも、パパとママの子供に変わりはないわ」

「うん!」

母親は思う。この娘は父親に良く似ていると。父親からすれば顔立ちは自分に似ているらしいが性格は間違い無く父親譲りである。しかし父親と異なるのは――
この少女は、父親の不幸を打ち消して余りある『幸福』を自分達に与えてくれるのだと。

「さて、今日はお祝いにシャケでも……」

「まり、けーきたべたい!」

「ケーキ?」

「うん、うれしいことがあったひはけーきたべるの。まり、こうちゃいれるよ!おなかのあかちゃんにものませてあげよう?」

「はいはい。じゃあママと一緒にしようね。インデックスおばちゃんから届いた茶葉があるから」

――海の向こう、今や総大主教となった神の家を守る聖女(かぞく)がそう言っていた。
近々、終ぞ右方のフィアンマをも凌駕する力を手にした炎の魔術師を伴って来日して来るらしい。
あの燃えるように赤い髪をした、自分達の結婚式を取り仕切った神父を――




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