485:LX[saga sage]
2012/01/22(日) 21:08:06.23 ID:YlqCPHyk0
(このミサカは『あのひと』に嘘をつきました)
彼女は今日は休みだった。いや、休みにしてあった、と言うのが正しいだろう。
なぜなら、集中して仕事が出来るような精神状態を保てるかどうか彼女には自信がなかったからである。
年休を申請した時は、実はそこまでは考えつかず、どちらかと言えば反射的に出したのであったが。
(いざ今日になってみると、情けないことにこのザマです。正解でしたとミサカはため息をつきます)
と彼女は自嘲の笑みを浮かべた。
(こんな状態ではとても医療勤務につけません、とミサカは冷静に自分の精神状態を分析します)
のろのろと彼女は寝間着を脱ぎ、シャワーを浴びに浴室に入った。
熱いシャワーを浴びながら、彼女は意識をミサカネットワークに繋ぐ。
いきなり膨大な数の声が、視覚が流れ込んでくる。
その中で彼女は検体番号10039号を探す。
いた。
恐ろしい勢いで風景が流れてゆく。バイクのエンジン音が、風切り音が飛び込んでくる。
ひたすら前を、時折ミラーを見て、追跡者の有無の確認をする。
(ひとり、なのかしら)
(まだ、あのひととは会っていないのかしら)
(いっそ会えない方がいいのに)
「ミサカ〜誰も付いてきてないから少しスピード落としてくれよー」
ふいに、男の声が聞こえて来た。
御坂妹はビクッと体を震わせた。その声は、まちがいなく、あのひと。
(あなた……乗っているのですね)
10039号のうしろに、彼女にしがみつく形で、あのひとが、そこに。
「いえ、油断は出来ません。今は朝の通学時間帯です。渋滞に引っかかれば簡単に追いつかれます。稼げるうちに距離を取る必要があります!」
御坂妹の思念に気づかないのか、10039号の凛とした、でもどこか嬉しそうな声が流れてくる。
(もう、たくさん。これ以上聞きたくありません)
彼女・御坂妹は鬱々とした思いを抱えたまま、再びネットワークから離脱した。
1002Res/1293.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。