506:LX[saga sage]
2012/02/05(日) 20:12:49.08 ID:wkzQzq6H0
一方、御坂家では……
「うちの美琴がずいぶんと世話になっているそうだね。ありきたりだが、お近づきの一杯だ。まぁ飲め」
御坂旅掛がぐい呑みを当麻に渡し、2合徳利から酒をなみなみと注ぐ。
「はい。頂きます」
こうなることを予想していた当麻は、息を整えてぐいっと一気に飲み干す。
「ほう、いけるじゃないか。空、ということはもう一杯だな」
「お父さん、ちょっとまだ昼……」
美琴が止めろ、と言うニュアンスで口を挟むが、旅掛は意にも掛けず、逆に
「む? なんだ、お前もお相伴に与りたいのか? ああ、そうか。そうだったな。おめでとう美琴。
まぁ確かに今日から堂々と飲めるわけだな。いやぁ、娘と一緒に酒が飲めるとは、これは実に嬉しいことだ。うむ。父親冥利に尽きるな」
と、旅掛は一人で合点している。
「誰が昼間っから酒飲むって言ったのよ? ……ったく、勝手に決めないで欲しいんだけど?」
「あ〜ら美琴ちゃ〜ん? 何無粋なこと言ってるのかしら〜? 貴女も目出度く二十歳になったんだから、今日はお祝いなんだから〜♪
パパとママの娘が飲めないわけがないでしょう? ほらほら、しかめっ面してないの。シワが増えちゃうわよ?」
さーて、それじゃいっちょ始めるか、と言う感じで純米大吟醸のボトルとグラスを持って美鈴が割り込んでくる。
それを見た当麻は、またあの時の美鈴を思い出し、思わず声に出してしまう。
「あ、あの〜美鈴さん、酒はほどほどにしておいた方が……」
「ん?」
「何?」
父・旅掛と娘・美琴が「どういうこと?」と言う顔で同時に当麻を見る。4つの目で見すえられた当麻は瞬時にやばい、と悟る。
「い、いやその、一人くらいはしらふでいた方がいいんじゃないかな、と思いまして……」
「ちょっとあんた、私が飲むって勝手に決めつけないでよ! ……アンタ、まさか……母さんと飲んだことがあるってわけ?」
(うわー、ヤビヘビ! やっぱ黙ってれば良かった……最悪ですよ当麻さんは)
鋭く突っ込んでくる美琴。どうしたものかと頭を抱えてしまう当麻を救ったのは、やはりこの女性。
「あ〜ら美琴ちゃん、あなた、飲まなくて良いわよ? ……もう、飲んでもいないのにそんな絡むようじゃ、貴女に飲ませたらとんでもないことになりそうだもんね」
いたずらっぽい顔で美鈴が美琴に突っ込む。
「ちょっと酷いってば、母さん。私、絶対にそんな醜態さらさないから。わ、私がそんなわけないでしょ?」
「あらそう? ホントかしら?……じゃぁ試しにちょこっと飲んでごらんなさい? 軽くでいいから」
「おう、そうでなくちゃな。今日は美琴の目出度い日なんだからなぁ、本人のお前が飲まんでどうする? じゃぁ、それはワシが開けてやろう、いいな?」
かくして、当麻のミスは美鈴が巧妙に話をすり替え、逆に美琴はお祝いとはいえ、大吟醸を飲む事になってしまった。
未だ日も高い、午後の昼下がりに。
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