640:LX[saga sage]
2012/04/08(日) 19:59:59.38 ID:TWpm6pHq0
「すみません……お忙しいところを……いきなり押しかけて、お見苦しいところをお見せしてしまって……」
少しは落ち着いたのか、ひくひくとしながらも美琴ははっきりした声でお詫びを述べた。
「気にすることはないよ? ぼくは医者だからね?」
優しい声をかけ、彼はティッシュボックスを美琴に渡す。
「申し訳、ありません……ちょっと失礼しても宜しいでしょうか……?」
ティッシュで顔半分を隠してはいるものの、真っ赤な目でそのまわりの化粧がぐちゃぐちゃになってしまっている美琴は、恥ずかしそうに小さな声で訊く。
「そうだね、パウダールームの場所はわかるね? 出て右、10mくらいだよ? 人にぶつからないようにね」
優しく微笑んだ彼に黙礼した美琴は、バッグをかかえて部屋を出て行く。
「さて……彼女はどういう答えを持ってきたんだろうね……?」
そう独り言をつぶやいたカエル顔の医者は、カップを二つ取りだし、コーヒーを注ぎ入れた。
ひとつには、精神安定剤を入れて。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しばらく経って、御坂美琴はやつれた青白い顔で戻ってきた。
冥土帰し<ヘヴンキャンセラー>と異名を取る彼はその顔を見て若干の危惧を覚えた。
美琴の目にただならぬ気配を感じたからである。
(これは、ちょっと気をつけたほうが良いかも知れない)
「お忙しいところ、大変失礼致しました」
しっかりした口調で彼女は頭を下げた。
彼女を見る彼は、背中の産毛がチリチリと動くのを感じ取る。
――― これは、「殺気」 だ ―――
「いやいや、どうということはないさ。コーヒーを入れておいたけれど、どうかな?」
「有り難うございます。ちょっと胃の具合が良くないので刺激物は控えてますから、それで」
(うむぅ、飲んで欲しかったところだが……)カエル顔の医者の思惑は外れた。
「すみませんが、彼女、10032号を呼んで頂けますでしょうか?」
「かまわないけれど、ぼくもその場に立ち会うことにしたい。いいかな?」
え? と言う顔で美琴はカエル医者の顔を見つめる。
「ぼくは一応彼女らの保護者みたいなものだからね? もちろん内容については守秘義務があるから、絶対に口外することはない。
……こう言ってはなんだけれど、今日の御坂くんの様子からは只ならぬものを感じるのでね。
そう、『殺気』みたいなものを僕は感じるんだけれど」
彼は先手を打ち、機先を制した。
だが。
美琴の口元に、かすかに見えたのは……冷笑だろうか?
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