685:LX[saga sage]
2012/04/29(日) 20:48:57.61 ID:W/PWo5k00
「そんなことが……」
「信じられない……そんな、恐ろしいことって、あの子が……?」
学園都市の闇のひとつ。
量産型能力者<レディオノイズ>計画、そしてその後、新たに作られた絶対能力進化<レベル6シフト>計画。
さすがにこれを両親に伝えることは出来なかった。
絶対に言えない、そう彼は決めていた。
そんなことをしたら、二人の身に何が起こるか分かったものではないからだ。
知らない方が安全なのだ。
「当麻を、学園都市にやるべきじゃなかったな……」
「そ、そうよ。当麻さん? あなた、こっちへ帰ってきなさい、ね? ごめんなさいね、私たち、知らなかったの。そんな恐ろしいところに、あなたを」
「遅いよ、母さん。もう俺はあそこからは抜けられないんだ。俺はあそこで生きていくしかないんだよ」
身を乗り出してきた両親に、当麻は静かに答える。
そう、既に彼は学園都市の外交委員会メンバーの一人なのだから。
「そんなこと、だって……」
なおも食い下がる母・詩菜。
「ダメなんだよ、母さん。それに……あそこにはね、あいつが、美琴がいるんだ」
当麻は母を諭すようにいう。
「美琴だけじゃない……御坂妹だって、その他の『妹達<シスターズ>』たちもいるし……あいつの友達だっている」
そこで、彼は何かを決心したかのように、両親の顔をはっきりと見る。
「オレ、決めたことがあるんだよ。もうずっと前だけれどね……そうだよ。そうだったんだ。オレは、あいつの、美琴の世界を守るんだって。
そう、あいつだけじゃなくて、その廻りも全部ひっくるめて、守るんだって、そう決めたんだ。約束したんだよ。
こんなことになっちゃったけれど、ね……。今さら、こんな事になって、どの面下げて何を言ってるんだ、って怒鳴られそうだけど、ね。
……だから、オレは逃げない。あそこから、学園都市から離れるわけにはいかないんだ。美琴が、みんながあそこにいる限り」
「わかった」
「あなた!?」
しばらくの沈黙の後、刀夜は一言だけ、言った。
詩菜は息子の決意が固いことを知った。が、それでもなお、母親である彼女は不安をぬぐいきれなかった。
彼女の理性は、息子の決断を理解した。
しかし、彼女の感情は、
息子を愛する、ひたすら息子の幸せを願う母親としての感情は、
その息子の決断に納得出来なかったのだった。
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