717:LX[saga sage]
2012/05/13(日) 20:14:53.20 ID:5Ilf9fTa0
「あなた……少し、痛いです」
驚き、何をするのですか、と当麻を見る御坂妹に、静かに当麻は答えた。
「お前のその幻想をぶち壊したからな……言っただろう? お前のお腹の中にいる子は、お前だけの子供じゃないと。半分は俺のものなんだぞ?」
「……」
「それに、以前言ったと思うがな、覚えているか、御坂妹? 『勝手に死ぬんじゃねえぞ。お前にはまだまだ文句が山ほど残ってんだ』って、思い出したか?」
(ああ、その声は、さっきの夢のとおり……あれは、もしかして、夢じゃ……ない?)
御坂妹は、その言葉を思い出す。
忘れてはならないはずのあの実験の時に、そしてついさっき、夢うつつで聞いた、その言葉を。
枯れていたはずの涙が、溢れてくる。
「は、はい……ミサカは、覚えて、います」
「そうか」
「あと、どれくらいあなたの言うことを聞けば、ミサカは死ぬことを許されるのでしょうか?」
「さぁな……少なくとも、今は全然ダメだな。それにだ、お前は永遠に俺のものですって、お前、自分でそう言ってたよな?」
「はい」
「じゃあ言うぞ。俺のものなんだから、俺が良いと言うまでお前は死ぬことは許されない。わかったか?」
「はい。わかりました」
彼女は目を閉じる。その目尻から、つーっと涙がこぼれ落ちてゆく。
「宜しい」
「ミサカは……このまま生きていて、いいのですか」
彼女は目を開き、当麻を見つめる。流れる涙を拭こうともせず。
「当たり前だろう」
「でも、お姉様<オリジナル>が何というか……」
「あー、それは仕方ねぇな。俺にも会ってくれないし。まぁ時が解決するかもしれないけれど、しばらくは反省して大人しくしてろ。
一番ショックを受けてるのは美琴なんだから」
「申し訳ありません……」
「いいな、もう二度と変な気を起こすんじゃねぇぞ。お前一人じゃないんだから。わかったな?」
そう言うと、当麻は枕元の私物置き場にあるウェットティッシュを取り、彼女の涙を優しく拭いてゆく。
「はい。あの……」
「?」
「ひとつ、御願いが……」
「どうした? はっきり言えよ?」
「ミサカは……お腹が空きました……」
恥ずかしそうに言う御坂妹。
その顔を見て、初めて当麻の顔に微笑が浮かんだ。
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