725:LX[sage saga]
2012/05/20(日) 20:15:37.58 ID:8Ks9kkwp0
美琴は、席を立ちたい衝動をぐっとこらえるしかなかった。
彼女が、学園都市が何を考えているのか聞かねばならないからだ。
「もうひとつはね、貴女がここに入って、ここで偉くなって、この街の仕組みを変える事よ?
今の貴女にはその力はない。でも、地位が上がれば、どうかしら?」
「そんな、元も子もないような話……」
思いもかけない話だった。
しかし、中に入ればこちらのもの、というような彼女の物言いに美琴は心で反発する。
(ものは言いよう、よね)
「あ〜ら、よっぽど実現性のある話よ? 貴女の性根ひとつなんだし。昔やったクーデターのような暴力に訴えるやり方よりはよっぽどスマートだと思うけれど?」
「……」
「ただね、一つ言っておくとね、この方法を採った場合、あなたは権力を握る側になる。
人間は弱いものでね、権力を握っちゃうと、それまでの意気込みは消えちゃうのよ。
それもそうよね、苦労して手に入れた地位を、力を、富を、名声を、全部消し去る事って、自分が思ってるほど簡単じゃないのよ」
「……」
途中から、笠原の口調が自嘲のような物言いに変わったことに敏感に美琴は気づいた。
(え、それって、もしかして自分自身のことを言ってるの、このひと?)
「そうね、もうひとつあったわ。まぁ貴女はしないと思うけど、流れに乗って、流れのままに泳いで行くことも出来るわよ?
それはそれで一つの人生だし。そう言う人も多いわ。
貴女は若い。どの道も選べる。ある程度までならやり直しも効く。羨ましいわ、もう私なんかどうにもならないのよ」
「……そうなんですか」
(ひっかけかしら、それとも、ある意味、事実なのかしら? 後で調べてみようかしら)
美琴はそう考えた。そう思うと少しは気を紛らわすことが出来そうだったから。
「ふふ、おばさんにだって、目標はあったのよ。そう、あったの……なーんてね、そんな事を言わない人生を歩みなさいな」
「はい」
「ところで、彼とはその後、うまくいってるのかしら?」
予想だにしない、とんでもない爆弾質問が飛んできた。
「は……?」
「ま、プライベートな事だから、聞くのも野暮かな、とは思ったんだけど。安心してると、足下すくわれるわよ? 気を付けなさいね?」
意味ありげな、笠原の顔、そしてその物言いに、美琴は緊張すると同時に恐怖を覚えた。
(まさか……)
「ええ、有り難うございます。おかげさまでなんとか……」
強張った顔のままなんとか答えた美琴を、彼女はどう見たか。
「じゃ、さっきの話、近いうちに返事聞きたいから、よく考えなさいね」
笠原真彩はそう言って、話を終えた。
だが、美琴がその返事をする前に、それは起きた。
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