724:LX[sage saga]
2012/05/20(日) 20:11:06.09 ID:8Ks9kkwp0
「私が嫌なんです」
「ふぅん。マジメなのね」
「茶化さないで下さい」
「困ったわね。彼女たち、今失業中なのよねー。働いてお金を稼いで使って楽しむ事を覚えちゃったから、昔のように病院とかに飼い殺しにするわけにはいかないのよね」
正攻法では話にならないとみた笠原女史は搦め手から攻め始める。
「飼い殺しって、そんな」
果たせるかな、美琴の反応が変わる。
「ものの例えよ。要はね、そんなことにはもう彼女たちは精神的に耐えられないのよ。それに、看護士にしたって3人も同じ場所にいたら今回どころの騒ぎじゃないし。
それで、ものは相談なんだけど?」
「漸く本題ですか?」
「あら厳しいわね。あなた、1年くらい留学してこない、かな?」
「留学? 私が? どこへですが?」
「アメリカ、学芸都市。マル秘の任務だけど」
「いきなりなんですか……でもそれ、全然丸秘になりませんが?」
ここから姿を消せば、少なくとも今の状況からすればいずれバレる話でしょうに、と美琴は思う。
しかし、笠原の話は美琴の予想を上回るものだった。
「ううん、こっちでは妹達<シスターズ>の1人に、貴女の代役をやってもらうの。御坂美琴のかわり、としてね。
そうね、1人じゃなくて、2人でもいいかもしれないわね。交代要員も必要でしょうし」
「はい?」
ちょうど良いじゃない、うんうんそうすべきよね、と自分で納得している笠原に、美琴は付いていけない。
「あら練習よ練習。2年後、貴女が社会人になって、広報委員になったときには貴女には彼女たちが必要になるはずよ、どう?」
「そんな、まるで私の進路が決まったような言い方って……ちょっと失礼じゃありませんか?」
いつ、私が学園都市の広報委員会に入るって言いました? と美琴はむっとして言い返す。
が。
「あら〜? 貴女には職業選択の自由は残念ながら認められないんだけど。学園都市在住のレベル5である以上、ね?」
「そんな、バカな……」
今まで、どちらかと言えば軽い調子でしゃべってきた笠原が、急に一転して、重々しい声になった。
(このひと、本気、か……)
美琴は緊張する。
学園都市は、本気で私を取り込むつもりなのか、と。
膝に置いた手に力が入る。
険しい顔になった美琴を見た笠原は、あらやだ、そんなに真剣にならないで、とまた柔らかい調子に戻って話を始める。
(そんな猫なで声に騙されるものか)
美琴は心の中でそう叫ぶ。
「そうね、もし、それが嫌なら、方法は二つ。一つは能力を捨て去り、ただの人になること。
そうはいっても、貴女の場合、ちょっと有名になりすぎてるし、彼女たちもいるから難しいと思うわね」
「……」
皮肉っぽい調子で笠原は話を続ける。
その裏には、貴女に出来る? 出来っこないわよねぇ、という彼女の嘲るような本音が透けて見えていた。
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