735:LX[saga sage]
2012/05/27(日) 19:35:07.70 ID:IGkAb8mz0
「久しぶりですねぇ〜、御坂さんもいろいろ大変ですね?」
有名人である事への羨ましさ半分、その反面でなんだかんだと話題にされてプライバシーもあったものではないことへの同情半分、という顔で、初春飾利はパスタをほおばりながら言う。
「そうよー、大変なんだから……もう嫌んなっちゃう」
美琴がぼやく。
ここは、学園都市の治安を司るアンチスキルの総合本部、正面ロビーにある喫茶室。
二人は少し早いランチを取っていた。
初春飾利は、美琴の一つ下である。
ジャッジメント時代から情報分析に長けていた彼女は、高校を卒業するとそのままアンチスキルに就職し、そのまま総務部に配属された。
もちろんこれはダミーであり、実際には情報分析チームに属していたが、もちろんこのことは外部には極秘であった。
彼女は荒事には全く向いていなかったし、そしてそんな些末なことを補ってあり余るだけのスキルを持っていたからである。
「学園都市の守護神」とまでささやかれる彼女のスキルには更に磨きがかかっていた。
「そうそう、わたし見ましたよ〜、そっくりさんって、ホントにいるんですね! あの本見たときには、これ、絶対コラだと思いましたよ♪」
屈託なくケラケラと笑う初春。トレードマークの花飾りはぐっと大人びたものになり、本数も減ってはいるものの健在である。
「止めてよ、もう……最初に友達から見せられた時は、心臓が止まるかと思ったんだから」
ティーカップの紅茶をぐるぐる意味なさげにスプーンでかき回す美琴に、初春が偏光パッドを立ててちらりと見せた。
――― 私にどんな御用でしょうか ―――
瞬時に読みとった美琴はバッグからメモを取り出し、その1頁を初春にやはり一瞬だけ見せる。
(ある人間の位置情報を知りたい)
チラと視線をそのメモに走らせた初春は、嬉しそうな顔で美琴に言う。
「知ってます? 今度の土日、ホテル・ザ・ロイヤルでケーキ&スイーツバイキングがあるんですよぅ。
わたし、行こうかなって思ってるんですけれど〜?」
「へー、そうなんだ? じゃ、一緒に行こうか? 奢ったげるわ?」
「うわぁー、さすが御坂さん、太っ腹ですねー♪ 宜しく御願いします〜!」
商談成立である。
「そうだ、御坂さん、ちょっと付き合ってくれません? 小一時間くらいですけれど」
あくまで今思いついたように、しかし意味ありげな顔で初春が美琴に尋ねる。
「いいけど、貴女、外へ出てもいいの?」
昼休みとはいえ、勤務時間中じゃないの? と美琴が不審そうに訊くが、彼女は笑って答えた。
「何の問題もありませんよ? わたしはどこでも仕事出来ますから。これからクルマ出してきますから、正面玄関で待ってて下さいねー」
そう言うと、彼女はIDカードをテーブルのキャッシャーに当てて支払いを済ませた。
「あら、良かったのに」と美琴が言うと、
「とーんでもない、ここはわたしのテリトリーですよ? あ〜ケーキバイキング楽しみ〜♪」
……高い授業料になりそうだ、と美琴は心の底で思った。
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