804:LX[saga sage]
2012/07/22(日) 21:01:43.13 ID:xs0nTr/s0
一方その頃。
当麻は、築地の御坂妹のウィークリーマンションを訪れていた。
「あなた? 今日は予定ではなかったのに、いったいどうしたのですか?」
驚いた表情の中にも、彼の来訪を喜ぶ御坂妹。
彼女のお腹は今や十分にその存在を誇示しており、顔も少しむくんだように見える。
だが、今はそれよりも。
「ああ。お前のことで、ちょっと気になる情報があってね。美琴と相談して、お前を一旦違う場所に移ってもらうことにしたんだ。
身重のところ、すまないな」
「いいえ。ですが、このことは先生には連絡したのですか?」
「ああ、もちろんさ。行き先も教えてある。聖ルカ病院での診察は今まで通りだから、ちょっと遠くなるのが問題だな」
「一体何ごとですか? その、私のことが公にでもなったのですか?」
「まさか。ああ、でもな、確かに公にはなってないが、知った連中の中にお前に手出ししそうな奴らがいるって話があってな……」
御坂妹の顔が険しくなる。
「まぁ、実際にちょっかいをかけてくる可能性はゼロに近いらしいんだが、念を入れた方がいいだろうってことでさ。
荷物、持っていけるか? ウィークリーマンションだから、着るものくらいかな?」
「本があります。衣服はそれほど多くありません。そっちは私が運びますから、あなたは本を御願いします」
「いや、お前は身重なんだから気にすんな。そこに座ってればいいよ?」
そう言ってクロゼットに向かおうとした当麻の腕を、顔を赤くした御坂妹がガッチリと掴む。
「あなた? もうあなたってひとは……少しはミサカの、女性の身になって考えて下さい! 『衣服』には下着だってあるのですよ?」
一瞬、はた、と立ち止まった当麻はすっと赤くなる。
「あ、そ、そうか。そうだな。そりゃそうだ……わかった! すまん。じゃ本を俺持っていくわ。台車取ってくる!」
そう言うと彼はあたふたと玄関から飛び出してゆく。
「まったくもって、あのひとは……勝負下着ならともかく、こんな妊産婦用の下着みたいな、色気も何もないものを見せられるわけがないでしょう……」
ブツブツと文句を言いながら、御坂妹は袋にパッパッと肌着類を詰め込んでゆく。
(そう言えば、わたしはどこへ連れて行かれるのでしょうか?)
肝心な事を聞いていない、と御坂妹は玄関を見つめ、戻ってきたら直ぐに聞こうと考えながら、衣服をハンガーから外し机の上で畳んで行く。
その机の上にあるもの。
数冊の育児本、そしてかき集めた情報をプリントアウトしたファイル、胎教に良い音楽を聴く為のミニコンポセット……
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