866:LX[saga sage]
2012/09/16(日) 21:15:08.18 ID:XIEedObl0
新年。
ここ数年は当麻も美琴もそれぞれ一旦実家へと戻り、その後は大晦日の夜に二人はいつものように騒ぎを起こしつつ年明けを祝い、新年の恒例の行事(つまり、初詣だ)に勤しむのであったが、今年はそうはいかなかった。
当麻は年末からサイエンティフィック・インターナショナル・トレーディングのアルバイト、と言う名目で土御門元春に引っ張り出され、世界一周の旅に連れ出されたのだった。
「新年の挨拶の他に、いろんなところのいろんな人に、報告しなきゃならないことがあるんじゃないかにゃー、カミやん? んんん???」
というわけである。新年挨拶とはいうものの、要は結婚の報告に行け、ということなのであった。
もちろん、土御門が単純に報告だけで終わらせるわけもなく、とりわけイギリスにおいては彼は建宮斎字(たてみや さいじ)と組んで、五和を欧州での現地妻にしてしまおうというプラン(いたずら)を組んでいた。
二人は、単にイギリスでの面倒見を彼女に頼むつもりで、半分冗談で話をしたところ、五和はそれを逆手に取り、あっさりと二つ返事で引き受けたのである。
あわてたのは二人の方で、五和に平謝りするも、彼女はてこでも後に引かぬ決意を示し、聞く耳をもたなかった。
結果的に当麻がどのようにして、すっかり覚悟を決めていた五和をなだめすかしたかは、それだけで一つのSSが出来るくらいであったが、本筋ではないので省略しよう。
一方の美琴はというと、彼女は学園都市の「顔」として、年末から新年にかけて学園都市の新年イベントに出ずっぱりであった。
そのハードスケジュールの裏には、第一秘書兼影武者である御坂美子(みさか よしこ=検体番号10039号)と、美琴の第二秘書である御坂琴子(みさか ことこ=検体番号19090号)の存在があり、彼女ら無くしては成り立たないものだった。
さすがに、上司である笠原真彩(かさはら まあや)も危惧し、いくつかのイベントを外したくらいである。
美琴は、実家に帰りづらかった。いや、帰りたくなかったというのが正しいかも知れない。
なぜなら、実家には、あの、検体番号10032号、御坂妹がいたからである。(彼女には、まだ名前をつけていなかった)
彼女を実家に預けるというアイディアは、実は彼女自身が言い出したことだった。
「あの子がいるから、私、家に帰りたくない」などという事は、口が裂けても言えるわけがなかった。
そもそも、自分の実家に預けることで、御坂妹こと検体番号10032号を自分と当麻のところから遠ざける事が出来、なおかつ監視も可能、という読みがあったことを美琴は内心認めていた。
そのことは彼女に後ろめたさを感じさせることになり、その裏返しで、彼女は意地でも実家に帰るわけにはいかなかったのだ。
そこにもってきて、婚約者の当麻はこの時期に海外出張だと言って来たのだった。
正直、彼女はそれを聞いた時、おもわず安堵した。
(これで、あの子に顔を合わせなくても済むわ……)
アイツが実家に帰るならば、当然自分も帰らねばならない。
そうなれば必然的にあの子と顔を合わせなければならなくなるが、それは苦痛以外の何者でもない。
美琴がホッと胸をなで下ろしたのはむべなるかな、であった。
肩の荷が下りた開放感から、
「年末年始に海外出張とか、まだ大学を卒業もしていない学生を随分こき使ってくれるじゃないの?」と軽い冗談ぽく答えた美琴だったが、あることにハタと思い当たり、俄然彼女の機嫌は悪くなった。
「アンタ、それって、あの銀髪シスターのところへ行くって言うんじゃないでしょうね?」
その瞬間、携帯の当麻の画像は大きく揺れ、彼がうわずった調子で答えて来たのに対し、美琴は画像通話を切った。
怒りのあまりに、ではなく、彼のあまりの右往左往ぶりに、思わず笑い出しそうになったからであった。
(ホントに、ウソがへったくそよねー、アイツ)
実は、一瞬だけムカッと来たものの、当麻が統括理事会外交委員であることを直ぐに思い出し、まぁ、お役目なんだろうな、と彼女は冷静さを取り戻していたのであった。
まぁ、アイツが事情を説明するまで、私がアイツの本当の姿を既に知ってしまっていることは内緒にしておこう、と美琴は思った。
当麻がどんな言い訳をしてくるかが楽しみであったからだ。
果たせるかな、携帯が振動した。もちろん、当麻からだ。
(さて、アイツはどういう話で切り出すのかな〜?) 美琴はくすっと笑いをかみ殺し、不機嫌そうな顔を作ると画像通話を開始した。
「うっさいわね。なに?」
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