940:LX[saga sage]
2012/12/02(日) 20:11:48.04 ID:fLg29DFl0
  
 一方の美琴は美琴で、異変を感じ取った直後、直ちに初春飾利と連絡を取り、そして彼女から恐るべき内容を聞いていた。 
  
 今回の事件では、美琴は初春飾利の全面協力を得て、犯人たちが潜む再開発地区のビルへ突入出来たのだった。 
  
 (現行犯人は何人であっても逮捕出来る、という点でクリアできるものの、彼女の能力では過剰正当防衛になりかねないが) 
  
 初春から通報を受けたアンチスキルも直ちに出動したが、電磁波を操り自由自在に「空を飛ぶ」ようにフルスピードで駆ける彼女には追いつけるはずもなかった。 
  
  
  
 例によってこの情報は多摩川べりに停めたクルマの中で、メモ書きで伝えられた。 
  
 まず極秘情報1つめ。 
  
 高位能力者の結婚・出産について、統括理事会の中で動きがあり、特別チームが編成されたらしい、ということ。 
  
 高位能力者とは少なくともレベル4の上位グループ、もしくはレベル5を指すらしい。 
  
 ただ、具体的にこの特別チームが何を目指しているのか、美琴のスキャンダルに端を発した動きなのか、あるいは全く違う次元の話なのかは不明。 
  
 次に2つめ。 
  
 この情報は、ごく一部の外部機関に通達され、そこが密かに動いていると推測される。 
  
 今回、御坂麻美の子供を襲ったグループは、この話を聞いたもののうち、御坂美琴の子供、と勘違いして拉致した可能性もある。 
  
 最後の部分は初春の推測であったが、美琴はその可能性もあると思った。 
  
 妹達<シスターズ>は、自分のクローン。欠陥電気<レディオノイズ>という二つ名もあるが、研究者からは全く相手にされていない。 
  
 強いて言えばヒトのクローンの有性生殖という点ぐらいだろう、と。 
  
 だが、それとて別に拉致監禁してまで研究するほどの価値はないはずだ。とすれば。 
  
 そして3つめ。 
  
 人身売買と見られる情報が書き込まれた掲示板があり、現在泳がせていると同時にアドレスの解析を行っている。 
  
 少しずつ応札する内容の書き込みが増え、既に30件に届こうとする勢い。 
  
 非常に複雑な為、解析に時間がかかっている、とのことだった。 
  
 (初春さんでも苦労するんだ……) へーと言う思いでメモ帳に字を書いて行く彼女の横顔を見つめる美琴であった。 
  
  
  
 初春が最後に書き込んだ文章を見た美琴は苦笑した。 
  
 ――― インペリアル・ホテルのケーキバイキング、宜しく御願いします! ――― 
  
 「えへへ」と笑って美琴を見る、少し隈の出来た初春に彼女も笑顔で答えた。 
  
 「お安い御用よ! じゃ、行ってくるね!!」 
  
 そう言うと美琴はドアを開け、初春に手を振ると走り出した。 
  
 「あ、あのっ!! アンチスキルも出ますからねーっ!!!」 
  
 あわてて初春もハリアーから降り、既に遠くに行っている美琴に向かって叫ぶ。 
  
 「聞こえてないよね、絶対……ま、昔みたいに暴走はしないでしょうけど……大丈夫かな? 白井さんがこんな時居てくれたらなぁ」 
  
 運転席に戻った初春は、そう独り言をつぶやいたが、いっけなーい、と直ぐに端末を操作し始めた。 
  
 人身売買の書き込みの解析を行う為に。 
  
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