965:LX[saga sage]
2012/12/17(月) 22:28:52.30 ID:tdje7QRJ0
  
 「え、そうなの? 学園都市じゃなくて外? 東京なの? 誰か会ったの?」 
  
 美琴は彼女ら妹達<シスターズ>を騙す事に良心の呵責を感じつつ、彼女に情報の中身を探りに走る。 
  
 「いえ、誰が会った、と言うような話ではありません。 
  
 ただ、東京の病院で検体番号12500号(後の御坂美雪)が定期調整を受けた際に、普段のメンバーではないミサカが通院していた、と言うような話を聞いたそうなのです、お姉様<オリジナル>」 
  
 「……」 
  
 「ミサカたちは、基本的に同じ場所でチェック、調整を受けています。これは昔から基本的に変わっておりません。 
  
 ですので、もし、この話が事実であれば、そのイレギュラーなミサカは検体番号10032号の可能性があるわけです」 
  
 「そうなんだ。でも、その『妹』が彼女だったとしたらどうして東京で調整なんか受ける必要があるのかしらね、おかしいわね」 
  
 「そうなのです。ただ、あの医者は『極秘の特別な仕事』についている、と言っていました。 
  
 だとすれば、彼女はまだ、その任務が終わっていないのでしょう、とこのミサカは考えています」 
  
 「私も以前にそんな事をあのリアルゲコ太から聞いた様な気がする。そう、打ち止めすら連絡出来ないんだっけ?」 
  
 「はい。未だに連絡すら取れないと、こぼしていました。上位個体の面目丸つぶれだと愚痴たらたらでした。 
  
 もちろん強制指令を使うという手がありますが、生命の危険が迫っていると言うわけでもないので、単に連絡が付かないというだけで極秘任務についている彼女を呼び出すのもはばかられるし、と愚痴っておりました」 
  
 (ごめんね、未来<みく:元検体番号20001号>。あんたにまで迷惑かけて。みんな、ウソ付いて、本当にごめんね) 
  
 美琴は喉元まで出掛かったその言葉を必死に飲み込んだ。                      
  
 「ごめん、話を戻すけれど」 
  
 美琴はバツの悪さをごまかそうと、話を元に戻す事にした。 
  
 「はい。こちらこそお姉様<オリジナル>の話を脱線させてしまい、申し訳ありません」 
  
 「お腹が膨らんできたら、私は実家に戻るつもりよ。さっきも言った通り、私が妊娠している事は知られたくないの。 
  
 まぁ、いつかはバレるだろうけれど、それは遅ければ遅い方がいいから」 
  
 「はい。わかりました。このミサカ、どこまでお姉さま<オリジナル>になりきれるかわかりませんが、最大限やってみます」 
  
 「ごめんなさい。とんでもない話だとは思うけれど。御願いするわね」 
  
 「もちろんです」 
  
 そう言い切った御坂美子(元検体番号10039号)の顔は緊張が走っていた。 
  
 美琴は、その緊張が、自分の影を1年続けるという大変な仕事から来るものだと思っていた。 
  
 だが、彼女の緊張した理由はそんなことではなかった。 
  
 「そのかわり、この件についてミサカからも一つ御願いがあります」 
  
 思い詰めた様子で、だが、美琴の目を真っ直ぐに見て、彼女は「御願い」なるものを切り出した。 
  
 その目をみた美琴は瞬時に思い出した。あの子(御坂麻美)の顔だ、と。得体の知れない嫌な予感がぐわっと彼女を押し包む。 
  
 「何かしら? 私に出来ることなら」 
  
 心なしか、美琴の声はうわずった。 
  
 「はい。私はお姉さま<オリジナル>、上条美琴になるわけです」 
  
 「そう……よ?」 
  
 「ですから、当麻さんの面倒もその間はこのミサカが承ります」 
  
 「ちょっと……アンタ」 
  
 「あの方をずっと一人にしておかれるのですか、この学園都市に?  
  
 そうだ、と仰るのならばそれは当麻さんがあまりにかわいそうです、寂しすぎます。 
  
 ならば、その間、せめてこのミサカがお姉様<オリジナル>に成り代わって、精一杯あの方をお慰めいたします」 
  
 頬をかすかに染め、しかし彼女は明確に言い切った。 
  
 当麻に恋い焦がれてきた一人の乙女は、今、おんなとして美琴に宣戦布告した。 
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