964:LX[saga sage]
2012/12/17(月) 22:06:18.17 ID:tdje7QRJ0
そうか、あの子のことは妹達<シスターズ>に秘されたから、この子達の庇護もまた、ないのだな、と。
もし、あの子の事を知ったら、妹達<シスターズ>はどうするだろう? と続けて美琴は考える。
出し抜かれたって、きっと大パニックよねぇ、と少し苦い笑いがこみ上げてくる。
自分だってそうじゃないの、と。
自嘲の笑いを勘違いしたのだろう、美子の顔色が変わった。
「お姉様<オリジナル>……何かおかしかったですか? ミサカがお二人を守れないとでもお思いですか?」
厳しい顔でやや鋭くなった声で問いつめてくる彼女に、美琴はあわててなだめに入った。
「ご、ゴメンね? 違うの、全然違うの。
そのね、赤ちゃんのまわりをね、完全武装のあんたたちが真面目な顔で取り囲んでるのを想像したらおかしくなっちゃって。
それだけだから。有り難う、そう思ってくれるだけで嬉しいから。ね、機嫌直して、ほら?」
必死になってなだめる美琴の姿に、なあんだ、という顔になった美子はバツの悪そうな声で答えた。
「失礼しました、お姉様<オリジナル>。
私たち妹達<シスターズ>はそう言う気持ちで、お姉様<オリジナル>と産まれてくる赤ちゃんをお守りします、という事がお解り頂ければ嬉しいです」
「有り難うね。そう言ってくれると、私、とっても嬉しい。この子もきっと喜んでると思う」
そう言うと、美琴は新たな生命が宿った自分のお腹をそっと撫でる。
「それで、1年ということはどういうことなのでしょうか?」
美子は真剣な顔で話を続ける。
「そうね。そのことなんだけれど、私はね、出来れば妊娠した事を表沙汰にしたくないからなの。ひっそりと東京で産みたいのよ」
「お気持ちはわかります、お姉様<オリジナル>。
ですが、能力者の妊娠、出産についてはいろいろと問題があると言う話を検体番号13577号(御坂琴江:みさか ことえ)から聞いた事があります。
出産時の痛みなどで、能力が暴走してしまう事故があったとも聞いています。
ただ、今では対策が取られたことで、今では事故は根絶されたとも言われています、でもそれはここ学園都市だからでしょう。
外部でそのような対策が取られているとは到底思えません。それにお姉様<オリジナル>はレベル5です。
むしろ危険だと思います。リスクが高すぎると考えます。外部での出産は止めるべきです、お姉様<オリジナル>」
「そこは考えたわ。仕方ないからその時はここへ戻ってくるしかないと思う。
一応アテもつけてあるし、まぁその時はその時で割り切っちゃえばいいかなって」
美琴のいうアテとは、麻美のときに世話になった新藤医師と柏原病院のことであり、東京の聖ルカ病院のことでもある。
もちろん、昔からの腐れ縁である、あのリアルゲコ太の病院も、だが。
なんせ、彼女は昔から妊産婦用AIMジャマーの開発に参加しており、今回遂に自分がホンモノの被験者になることにある感慨もあった。
「さすがお姉様<オリジナル>ですね。アテというのは、もしかしてあの病院でしょうか?
あそこなら検体番号13577号(御坂琴江)もおりますし……
そういえば依然として検体番号10032号(御坂麻美)は音信不通なのですが、いったいどうしているのでしょうか……?」
空を見上げ、心配そうな声の美子に、美琴はごめんね、と心の中で謝る。
(あの子は、無事よ。私のママのところにいるの。アイツの子供と一緒にね)
「お姉様<オリジナル>は何か聞いていらっしゃいませんか?
どうやら彼女は東京にいるらしい、という噂がミサカネットワークでは流れているのですが」
美子は不安そうな目を美琴に向ける。
(さすが妹達<シスターズ>ね) と美琴は彼女たちの情報網に舌を巻く。
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