983:LX [saga sage]
2013/01/04(金) 00:49:07.06 ID:JCikDjuT0
「彼にも言えない事があったら、その時は、私かな?」
いたずらっぽく、娘の目を見る母。
「ホントならね、ここでのんびり過ごすのが良いんだけど……あの子の前で、みっともないところ見せられない、って思ってるのはわかるわ。
だから、他のところでママは貴女の愚痴、全部聞いてあげる。全部吐き出しなさい?」
「お母さん……」
「だって、それが親の努めだもの。いいこと? 美琴ちゃんはいつまでも私の娘。たった一人の、私が腹を痛めて産んだ娘だからね?
たとえ貴女が母親になっても、おばあちゃんになっても、貴女はずっとわたしの子供なの。
だから、どんな時でも、私は貴女の味方。世界中を敵に回しても、ママは貴女の味方。それはね、親だけに許された特権なんだから」
「有り難う……」
不安だった。
自分のクローンとその子供を面倒見る(監視する)事で、母は若さを取り戻していた。父も生き生きとしていた。
自分の居場所がなくなったような気がしていた。実家はあの子とその子供を中心に廻っているようだった。
私の家なのに。
私の母さん、父さんなのに。
そして、もしかしたら、と淡い期待を持ってやってきたら、「ウチは無理だから」とあっさり拒絶された。
理由はわかるけれど、その通りだけれど、でも、私は、私は、
――― 実の子供、一人娘でしょ!? ―――
……よかった。嬉しかった。
私、母さんに見捨てられてなかった。
独り相撲だった。馬鹿みたいね、私。
母の胸に顔を埋める娘、その肩をやさしくぽんぽんと叩く母。
「ま、後で3倍返ししてあげるけどねー。それが私の愛情表現だしー?」
くっくっくっ、と忍び笑いする母。
「ちょっとー、せっかくいい話だったのに、それじゃぶち壊しじゃないのよぅ」
当たり前でしょ、もうすぐ母親になろうって大人が何甘ったれてるのよ? と笑う母。
えー、甘えて良いって言ったの、母さんじゃないのよー、と文句を言う娘。
穏やかな、午後の風景だった。
(番外編 終)
1002Res/1293.21 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。