過去ログ - 唯「あずにゃんが横浜のドラフト1位!?」憂「クライマックス!」
1- 20
136:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/07/27(水) 13:42:13.17 ID:B52d7inW0
家に帰って、重たい体をベッドに放り出す。
携帯を開いてみると、澪からの返信が届いていた。

いちごのアドバイスに沿ったものを買った、という旨の文と、その商品の写真が添付されていた。

いちごは、自分でも築かぬうちに、澪への発信ボタンを押していた。

何回かのコール音ののち、澪が嬉しそうな声で電話に出た。

『若王子さんが電話くれるなんて珍しいね。どうしたの?』

あの子のことを話すのは、あの母子に失礼に思えた。
かと言って世間話をするような気分でもない。
本当に自分はなぜ電話をかけたのだろうと苦笑した。

「あー、いや別に。クリスマスパーティー、うまくいきそう?」

『うん。あ、そのパーティー、高校時代のバンド仲間でやるんだよ』

やっぱり。

『懐かしいなー。あの頃。若王子さんは私たちの演奏聴いてくれたことあったんだっけ?』

「三年の時ライブの受付とかしてたし、少しくらいは」

話すことはないが、自分からかけた電話だ。とりあえず少し話を合わせて、会話らしいことをしておこうと思った。

「ライブってやっぱり楽しかったの」

『うーんどうだろ…最初は緊張してばっかりで楽しいどころじゃなかったなぁ。
 でも慣れてくると、自分の演奏で喜んでもらえるのが嬉しいんだよ。
 『もっと喜んでくれてる顔が見たい!』って素直に思えるんだ』

「へぇ…」

『でもあんまり欲張りすぎると駄目だったな。あれもこれもやってみたいって、失敗したりさ。
 自分が精いっぱいできることをやった時が一番ウケがいいし、自分も楽しかった』

その後もしばらく、他愛のない話を続けた。
会話が終わって電話を切ってからも、澪の話で気にかかった言葉がぐるぐるとリフレインした。

『自分が精いっぱいでいることを』

なぜだか、グローブを受けとらなかったあの子の顔が思い浮かんだ。
お父さんとのつながりを抱きしめ続けたあの子を。

『わたくしの杯は大きくはございません。
 それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます。』

何かで読んだ言葉だ。
さして印象深い本でもなかったのに、この言葉が急に思い出された。

いちごは、ふぅ、と細く長い息を吐いて、もう一度澪に電話をかけていた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
179Res/127.03 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice