過去ログ - 吹寄「上条。その……吸って、くれない?」
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9:nubewo ◆sQkYhVdKvM[saga]
2011/07/16(土) 02:24:49.75 ID:gKHRPC68o

もう一度、吹寄はため息をついた。
仕方ないのかもしれない。体調不良は、往々にして誰のせいでもなく不幸な偶然として起こる。
だけど、吹寄がそんな風に憂鬱そうなのは、嫌だった。このクラスメイトには、強気の顔が良く似合っているから。

「吹寄、なんか原因とか、わかるのか?」
「ん……いくつかあるのよね。最近、風邪で新しい薬飲んだのと、体調悪いのにちょっと無理して能力開発の授業受けたのと、あとは、変だなって思った日ってアレの終わりの日で」
「えっと……」

アレ、という響きがリアルで、恥ずかしくなって上条は顔を横に向けた。
それにしても吹寄はそんな話をして恥ずかしくないのか、と内心呟かずにはいられない。

「言っとくけど上条、あたしだって、恥ずかしいの我慢して言っているんだからね」
「お、おう」
「貴様はあたしの相談に乗るって言ったんだから全部話をちゃんと聞いて、誰にも言わないで」
「わかってる」

意外な感じを、上条は受けていた。吹寄はしっかりした性格の女の子だ。
問題を抱えればパパッと解決の方策くらいは立てるほうだと思っていたのに、
不謹慎なことだが、上条に言い募る吹寄の不安定さが、可愛かった。

「それで吹寄。病院とか、行くつもりなのか?」
「……やっぱり、行かないと駄目でしょう。何もないのにこんなこと、起こるはずがないもの」
「だよな」
「でも、どの科に行ったらいいのかとか、よくわからなくて。一番それらしい所には、あまり行きたくないし」

それらしい、というのはやはり産婦人科だろうか。たしかに、吹寄の歳でそこに行くのはためらいがあるのだろう。

「ねえ上条」
「なんだ?」
「貴様にあんまり迷惑をかけるのも、悪いとは思うんだけれど」
「水臭いぞ吹寄。今更なんだしさ、何でも言えよ」
「うん、ありがと。あのさ、あたしと一緒に、病院についてきてくれない……?」

おずおずと、吹寄がそうお願いをした。
付き添う時間くらいは取れる。二つ返事で了解しようとして、ふと、そのシーンを想像した。
産婦人科に、緊張した自分と、不安げな吹寄。
――――これはもう、完璧に若気の至りでトンでもないことになった男女の図だった。
もちろん吹寄は、それを判って上条に頼んでいた。
一人で行ったって、きっと変な目で見られる。何も産婦人科の待合室まで来てくれなくていい。
総合病院までの道を共にして、総合受付まで着いてきてくれるだけでいい。
そう懇願する気持ちで、吹寄は上条に尋ねた。

「やっぱり、駄目かな」

上条は、その声に諦めの気持ちが含まれているように聞こえた。きっと、上条の躊躇を感じ取ったのだろうと思う。
そんな声が聞きたくなくて、上条は考え直した。
別に、本当に妊娠させたわけじゃない。誰かに知られたって、誤解だって事はすぐに証明できる。
自分が恥ずかしいかどうかなんて、吹寄が感じている心配に比べれば、軽いものだ。



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