過去ログ - 吹寄「上条。その……吸って、くれない?」
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934:nubewo ◆sQkYhVdKvM[saga sage]
2012/02/17(金) 20:36:35.21 ID:SKE9GiOQo

「喰らえ必殺の魔球! エターナルフォースシュートォォォォ!!!!! カミやんは死ぬ!」
「おわっ!?! バカ、テメェそれただの上段回し蹴りじゃねーか!」

ボールは上条と青髪のすぐ傍を平和に転がって行った。空振りというよりは、もはやボールはオマケに近い。

「審判! コイツにレッド出してくださいよ!」
「無理やって。先生は今ボールのほう見てるし」
「テメーもボールに集中しろよ!」
「いや、ボクら今日はカミやんのマーク担当やし」
「二対一でマークされるほど上条さんはサッカーのセンスなんて持ってません!」

先生も気がそぞろなのか、男子の体育はグラウンドを全面使ったサッカーだった。
人間の密度が薄くコンタクトの回数が少ないし、ルールも分かりやすいのでサッカーは放置しやすい球技なのだ。

「おい青髪! 土御門! もっと上条にべったり張り付け! 上条に仕事をさせるな!」
「分かってるって! ほらカミやん! ボール来とるで! 死ね!」
「最後の単語が何で出てくんだよ! これはスポーツだろ」
「え? サッカーは格闘技やで?」
「どこの国の常識だ!」

必死になって青髪ピアスから距離をとる。体格で負けているせいで、なかなか逃げ切れない。
コートの中で二対一なので、振り切ることも出来なかった。
殺意をむき出しの青髪に対し、終始楽しげに笑っているだけの土御門のほうが補足し辛かった。

「チャンス! 殺れ土御門! そいつは副作用に苦しむ姫神さんの弱さに付け込んで最低の行為をしたクズだ!」
「――ッ!」

やばい、と上条は咄嗟に体を硬直させた。土御門は完全に背後を取っている。しかもウェイトの位置がいい。
体重の乗った蹴りが飛んできて、しかもかわす余裕が全くない状況だった。
だが。

「おい土御門ォォォ! テメェ何やってんだ! ちゃんとサッカーやれよ!!!!!」
「いやこれサッカーのプレイ内容じゃねーって!」
「いやー悪いみんな。ちょっとタイミングを取り損ねたにゃー。だが次は確実に決める!
 このうらやまけしからん男子高校生に裁きの鉄槌をくだしてやるぜよ!」

少し、土御門の反応が鈍かった。まるで後ろめたいような、というか自らの行為の正当化をし損ねたような。
ピーンと、上条の頭が今後の行動指針をはじき出す。なにか、ひらめいたものがあった。

「さあサッカーを楽しむぞカミやん! とりあえず真実かゲロの一つでも吐いてもらうぜよ!」
「吐くのはテメーだろ土御門! 昨日自分の部屋で妹と何をやってた!」
「なっ?!」

――戦闘行為において上条より高みにいるはずの土御門が、ブザマに第二撃をスカってずっこけた。

「な、何をカミやん!」
「あの……土御門、君?」

不意に、秋めくグラウンドに、冬の到来を予感させる寒々とした風が吹きすさんだ。
静寂が辺りを支配する。クラスメイトの男子が、一斉に足を止めていた。

「なあ上条チーム」
「なんだ土御門チーム」
「サッカーってさ、フェアなゲームだよな?」
「もちろんだ。片方のチームのキャプテンだけが狙われるのはアンフェアだ」
「じゃあ、そっちもマンマークつけていいぞ。うちの優秀なキャプテンに」
「ああ。そうさせてもらおう。幸いそちらのキャプテンは肉体再生の能力者だったな。アキレス腱の一つや二つ、ぶち切れても問題ないな」
「構わん。やれ」

土御門と上条を除くクラスメイト達が、重々しくコクリと頷いた。

「おいカミやん! 変な疑いをかけるんじゃねー! 俺まで狙われることになっただろ!!」
「ハァ? 舞夏の弱さに付け込んで最低の行為をしたクズに何を言われても響きませんねーだ!」
「俺はそ、そんなことしてないにゃーっ!!! 人の意思に反してまでやるようなクズだとは思うなよ!」
「合意の上でやったとか余計に悪いだろ!」
「そういうカミやんこそ自分の犯罪を棚に上げるな!」

乱闘付きのサッカーは、高校生の体育では珍しいはずなのだが。
……乱痴気騒ぎは教室で授業を受けている他クラスから苦情が来るまで続いた。



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