過去ログ - かがみ達は深い霧に囚われたようです
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/07/18(月) 05:36:00.55 ID:TBBAKQJ7o
悪路から解放され広く整った道路を十数分走り、
巨大な骨組みで構成された塔の足下に車を停めると、私は全身を目一杯伸ばした。
伸ばした指先から胸の中心まで、血液が酸素を乗せて駆けめぐる。
後部座席で肩を重ねて眠る二人に気づかれないよう静かに、私は凝り固まった体を外界に放り出した。
さわやかな風とやわらかな日光といきたいところだったけれど、
周囲の森が清風を遮り、太陽も暗灰色の雲に飲み込まれてしまっていた。
ぬるま湯のような空気の中で、溜息がひとつこぼれた。
鈍色の電波塔が鬱屈とした森を切り裂き、雲に呑みこまれるほどに高く伸びている。
これのおかげで外とつながれるってことは、これにその権利を全て委ねていることだ。
自分の内臓の一つをこの鈍色の巨人に握られているような気がして、
かすかな反抗で彼を守る金網の根元を蹴飛ばしてみた。
耳障りな音と共に露出した親指に軽い痛みが走り、ミュールが居心地悪そうに砂を噛んだ。
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