過去ログ - かがみ達は深い霧に囚われたようです
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131:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:13:08.65 ID:vyHZ93aso
「自分だけ辛いなんて、思わないで! いちばん辛くて、だけど、がんばってるのは高良先輩だよ!」
彼女の言葉が、私を目覚めさせる。
感情の激流を吹き飛ばしてくれる。
132:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:14:04.25 ID:vyHZ93aso
「そんな、高良先輩を悪く言うなんて……許せるわけないよ……」
……ごめんなさい、ゆたかちゃん。
私は本当に……どうかしてた。
133:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:15:05.04 ID:vyHZ93aso
「……みゆき」
彼女は泣いていた。
134:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:15:57.21 ID:vyHZ93aso
「みゆき……」
何を言うべきかもわからずただ声をかけ、手を差し出す。
そんな私の行動は、すぐに中断されることになった。
135:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:17:25.13 ID:vyHZ93aso
初めは鈍い音。
粘土を壁に叩きつけたような音だった。
それがカーテンで目隠しされた窓の外から聞こえてくる。
繰り返されるその激突音が、私達の意識を釘付けにした。
136:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:18:01.38 ID:vyHZ93aso
心臓が跳ね上がり、耳鳴りがキンキンと叫び声をあげる。
それは激突が繰り返されていた部屋の上手側ではなく下手側、つまり私達の居る入り口側の窓で起きた。
轟音と共に固く閉じられていたカーテンが捲れ上がる。
137:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:18:49.17 ID:vyHZ93aso
ほとんどはみゆきの言葉の通り、たしかにそれは例えるなら蛾のような生物だった。
しかし彼女の形容と違い、その体は全体が黒く濁っていた。
昆虫のような、ともすれば美しく見える漆黒では決してなく、コールタールを適当にぶち撒けたような歪んだ配色。
138:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:20:08.83 ID:vyHZ93aso
『それ』は突然に動きを止めたかと思うと、巨大な翅をばたつかせ始めた。
まるで初めて空を飛ぼうとしているかのように、その動きはぎこちない。
さあ、今すぐそこの消火器を手にとってあの気色悪い生き物を叩き潰せ。
139:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:21:30.42 ID:vyHZ93aso
今や『それ』の空を飛ぼうとする試みは達成しようとしていると思えた。
翅の動きは既に目で捉えられる速度を越え、十万の蛾が羽ばたいたような低音を発している。
視界の隅からゆっくりと、みなみちゃんの姿が消えていった。
140:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/01(月) 18:22:33.89 ID:vyHZ93aso
「……お姉ちゃん……」
止まない耳鳴りの向こう、背後から押し殺すようなつかさの声が聞こえた。
視線は決して『それ』から外さないまま、その声に耳を傾ける。
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