過去ログ - 【ポケモンSS】タイトルは決まっている
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70: ◆.Br/vY/Hx.
2011/07/30(土) 20:23:17.76 ID:j6w3v3D30
第16話


 ポケモンたる万物の存在を無条件に捕獲するアイテム。
 トレーナーとしての道徳性が否定され、世に出回る事なく試作段階で放棄された完全無欠のモンスターボール。
 存在が否定されたアイテム、存在しないアイテム。

 シズクの手に握られたのは"ソレ"……
 名を"マスターボール"

「敵の場所は分かる?」
(無論だ)

 爆発的にガスを噴き出したマタドガスにより視覚は皆無。目を開けている事さえままならない。
 マスターボールを両手で包みこむように持ち胸元の前に、そしてゆっくりと瞳を閉じる。

(状況が状況ですが、あなたの存在をここにいる誰一人にも見られる訳にはいきません)

 改まって喋りが丁寧になる。一瞬にして考えをまとめ瞳を開く。
 慌てふためく他のトレーナーやポケモン達の声や雑音が一瞬、途絶えた。

「この大袈裟な技は"こんらん"を招くもの……こんな煙やガスの中で冷静でいられる方がどうかしてる」

 目を細めて意識を集中する。

("白い霧" "テレポート" "サイコキネシス" 2秒刻み、最後のテレポートを含め10秒以内よ)
(問題無い)

 ボールを通してシズクとポケモンとの意志が通じ合う。
 作戦を伝え終えたシズクはゴクリと息を飲み込んで、ボールを持つ手を前に伸ばした。


―――

「ちっ……視界が悪い。これだけ充満していると"ふきとばし"でも何ともならないぞ!?」

 同じく現状を打破しようと口元を手で覆いながら何も見えない辺りを適当に見回して確認するジル。
 
(こうなったら、壁に穴でも開けて……ガスを外に逃がすしかねぇーか)

 腰にある一つのボールに手をかける。赤い装飾の施された青いボール"スーパーボール"である。
 この教室がバトルフィールドを有する広い部屋だとしても教室である以上、一方方向に歩き続ければ壁に当たる。
 少し駆け足でジルは一歩を踏み出す。

「……人影?」

 途中、煙の中に人影を見つける。敵か味方か分からず簡単には近づかない。
 一定の間合いを取りつつ、所々途絶える煙の隙間から、それがシズクだと分かる……

(シズク? 手にはモンス……いや、あいつは"マスターボール"か??)

 丁度ボールを手前に出しているシズクを目撃していたのだ。
 接近して話かけることも出来ただろう、しかし、ジルの興味はそのボールにあった。
 シズクはジルの存在には気付いていない。

(あのボール、やっぱり空じゃないのか)

 眉間にしわを寄せて集中してシズクを観察する。


―――

「お願いね」

 差し出した手から零れ落ちるように"マスターボール"がゆっくりと地面に向かう。
 その瞬間に息を飲むジル、しかし……そのボールは地に着く前に開口し、それと同時に辺り一面に"白い霧"が発生する。

(何だ? 今度は白い霧か? シズクの奴、一体何を?)

 一瞬だが、その白い霧の中を"テレポート"の際に見える独特の光が走った。
 ポケモンこそ確認できなかったが、その光をジルは見逃さなかった。

「!?」

 数秒も掛からなかった。
 見えないなりに光を追おうと辺りを見回す、そして、次の瞬間にシズクが立っていた前方に明るい光が見えた。




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