807: ◆DAbxBtgEsc[saga]
2011/10/25(火) 00:22:05.13 ID:6/gzPk47o
「失礼、この子に用があったのでな。
目眩ましを、とも思ったが君はゆっくり休んでいるようだったから静かにしようと思ったのだが」
「……誰だ、お前は」
「『後方』のアックア。ヴェントと同じく『神の右席』である」
その言葉を瞬間、体が強張った。
アックアと名乗った男の言う事が事実ならば、
ヴェントと同じ実力を持っていると考えた方が良い。
下手すると、それ以上の実力かもしれない。
はっきり言って、疲労困憊だ。
そんな中で目の前の大男の相手など出来るだろうか?
危険だ。頭ではそう叫んでいる。
上条の影も、あれは強いと察しているらしい。
危機感が募る一方であるが、当のアックアは小さく笑った。
まるで子供をあやすような、強面の男には似合わない表情だ。
「心配するな。今日の所は引き返すつもりだ。
ヴェントを苦しめていた魔術を潰す効果も既に潰えているようであるが。
こちらにも事情があるのでな」
一気にまくしたてると、早々に立ち去ろうとするアックアを前に、上条は指一本動かせなかった。
そんな上条に対してアックアは思い出したかのように口を開く。
「ああ、そうだったな。学園都市の負傷者を治す方法を教えていなかったであるか」
その言葉と共に、上条に向かって指で何かを弾き飛ばしてきた。
それを慌てて受け取った上条は怪訝そうな表情を浮かべる。
「……十字架?」
「既に貴様の右腕で破壊されては居るのだがな。
故に『天罰』は使えないし、学園都市の住民も時期に回復する事であろう」
「オイ待ッ……!」
「ではな」
上条の言葉など聞く必要も無い。そう言わんばかりに跳躍し立ち去った。
いや、跳躍したのかも駆けて行ったのかもわからない。一体どれほどの速度だったのか。
と言うより人間が出せて良い速度では無い。だとすると、先程の男は。
「……聖人……?」
何なんだ、次から次へと。と、上条は独りごちる。
止みそうだった雨が、再び降り始めた。
黒い雲から覗いている月が、今日だけは何処か不気味に思えた。
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