23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/15(月) 23:53:18.11 ID:pH3mSkydo
とある三角兵舎での簡単な卒業式でした。
例年どおりの卒業証書授与や教員免許状授与もなく、
来賓は、陸軍病院の偉い人たち、父兄代表もお一人だけでした。
あちこちから、すすり泣く声が聞こえます。
“海行かば 水漬く屍
山行かば 草生す屍
大君の 辺にこそ死なめ
かへりみはせじ……”
「海ゆかば」を歌っている最中にも、遠雷のように艦砲の砲声が響いてきます。
卒業式で歌う予定だった、先生方作詞作曲の「別れの曲」は、歌うことができませんでした。
二つだけともされたロウソクが、校長先生の顔を薄暗く照らし、砲撃でゆらめいて消えかかります。
来賓の祝辞も、校長先生の式辞もほとんど頭に入りませんでしたが、
「この卒業式は、戦場で挙行する世界で前例を見ない卒業式である」
という校長先生の言葉の一節だけが、心に残りました。
わずか三十分の式が終わると、私たちは余韻を感じるひまもなく、あわただしく各自の持ち場に戻ったのです。
その、卒業式をした三角兵舎さえ、翌日には焼夷弾攻撃で灰となってしまいました。
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