70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/17(水) 19:53:21.95 ID:c+5+k8k3o
――――澪と唯が、私のことを、覆いかぶさるように見下ろしている。
「律ぅ……」
「りっちゃん……」
逆光で表情はよくわからなかったけれど、その瞳には焦りとあきらめの色が宿っていた。
(ああ、私たちが手当てしてた人たちも、最期はこんなふうに見つめられて、こんな気持ちだったんだな)
そう思うと、急に寂しく、泣きたくなってきた。
それを悟られたくなかったから、私は二人に無理なお願いをした。
「水、飲みたい…。最期くらい、ワガママ、言っても、いいだろ?」
「私、持ってないよ……澪ちゃんも?」
「わ、わかった!水はいくらでも汲んでくる!汲んでくるから!最期とか言わないでくれっ!」
そう言い終わる前に、澪は走り出していた。あの怖がり澪が強くなったもんだ。
「あ、澪ちゃん、私も! でも、りっちゃんが……」
「……唯も手伝ってあげてよ。ついでに、これ、澪に」
私はカチューシャを外して、オロオロしている唯に握らせた。
「え、りっちゃん、そんな……」
「いいから……」
顔をゆがませながら作り笑いをしたけれど、ちゃんと笑えていたかどうか。
「………うん」
唯は細いサトウキビをもいで、歯で剥いて私に渡してくれた。
そして何度も振り向きつつも、茂みから遠ざかっていった。
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