12:Until reaching the starting line ◆oEZLeorcXc[saga sage]
2011/08/17(水) 16:20:43.36 ID:5Lu3WJlC0
「笑いたきゃ笑いやがれ……ガラじゃねェだなンてのはとっく自覚してンだ」
「ああ、ごめんなさい。別にバカにしてるつもりはないのよ? ただ少しだけおかしかっただけ」
どうやら自分は笑っていたらしい。どこかの金髪グラサンみたいなニヤニヤとした嫌な笑いじゃないといいんだけど。
「まあ、意外だとは思ったけど……貴方みたいな世界を救った英雄<ヒーロー>がそういう悩みを抱えてると思ったらつい、ね」
「自覚はあるっつってンだろォが……話すンじゃなかったぜ」
そういうと一方通行はそっぽを向いてコンビニの袋から缶コーヒーを取り出した。
白い頬が心なしか朱に染まっているが気のせいだろう。
私の目がおかしくなければ。
「だから謝ったじゃない。ごめんなさいって」
返事の代わりにカチっという缶を開ける音が聞こえて、一方通行はそのまま無言でコーヒーを飲み始める。
顔を背けてコーヒーを飲む一方通行。
改めて思う。
信じられないくらいに丸くなったものだ。
数か月前では考えられない。
正直、今日までは畏怖の対象としてみていた。
彼の中にも人間性というべき優しい部分があるのは知っていたけれど、直接それを向けられた事はなかったし、それよりも彼の強さの影響のが大きいのだから仕方がない。
だから恐怖の権化、暴力の体現する存在としてしか考えていなかった。
もちろんその本質は変わらないのだろうけれど、それでも今目の前にいるのは年相応……よりも明らかに精神年齢の低い一人の子供に見えた。
ツンデレってこういうヤツの事を言うのかしら。もっともツンデレにしてはツンが強すぎる。学園都市最強なくらいに(しかも物理的な強さだ)。
「彼女の好きなケーキでも買っていけば? そしてゴメンナサイ。それで収まるわよ」
そういってソファに深く座りなおす。
どうやらいつの間にか身を乗り出すほど話に聞き入っていたらしい。
「……ンな事でイイのかよ」
ズズズズというコーヒーをすする音の合間に小さな声が聞こえる。
相変わらずこちらに背を向けたままだがどうやら機嫌は治ったようだ。
「貴方の話しか聞いていないけど……結局はどっちも正しいしどっちも悪いような問題よ。ケーキでもあげて機嫌を直して、これからはこうしようって話せば分かってもらえるわよ?」
そう、それで解決する。
そんな事で解決するだろう。
些細な子供のケンカなのだから。
「今日はもう遅いしお店もやってないから……明日行って来たら? 朝多少でも機嫌が直ってたならケーキは一緒に買いに行ってもいいと思うけれど」
私に背を向けたままの一方通行からの反応はない。
ただその背中からはもう世界に絶望したような落ち込んだ雰囲気は伝わってこない。
むしろ「そんな事でイイのかァ……悩ンで損した」と照れている気さえする。
口には出さないけれど。
なんというか凶悪面の割に根が素直。
…………損をする人間ね。
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