806: ◆goBPihY4/o[saga]
2011/10/05(水) 02:16:58.43 ID:RhjH7vgho
覚醒。
という表現がしっくり来る。この突然の変化。
大切な家族を奪われた事に対する怒りが、彼の中の何かを目覚めさせた。
……と、いう事情であったなら、少しは恰好がついたかも知れない。
だが現実はそれほどスマートではない。
木原が崩れた瞬間、一方通行の脳内を支配したのは怒りとは別の感情だったのだ。
――困る。
木原がいなくなってしまう。
唯一、絶対の庇護者が。
彼がいなくなったら一体誰が一方通行を守ってくれるというのか。
散々言って聞かされてきた悲劇が現実のものとなってしまう事に、一方通行は心の底から恐怖していた。
木原以外は、誰も盾になってはくれない。
木原以外の人間は、皆一方通行を憎んでいる。
木原がいないと、生きていけない。
木原数多という居場所を失ったその瞬間、彼は人間としての全ての権利を剥奪されてしまうのだ。
実際にそうなるかはどうあれ、一方通行の中ではそれが絶対的な事実である。
恐怖、不安、焦燥、孤独感、寂寥感、絶望感。
あらゆる情けない感情がないまぜになって、彼の全身を駆け巡っていた。
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