38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2011/09/05(月) 21:55:05.93 ID:kCvpyrPN0
夜。
その国の帳は降りた。
皮の靴が石畳を静かに叩く音がほんの近くだけに反響する。
足音だけは立てまいと、着地音に気をつかっているためになお静かだ。
多少の風が起こす水路のさざ波の音も相まって、ほぼ無音に近いのかもしれない。
茶けたローブを羽織る彼女は走っていた。
魔術師「はっ…はっ…!」
その街は、クモの巣のように水路が張り巡らされている、まさに水の都であった。
人の通らない夜のその街には、数多の石橋と石畳を渡る、ニ人の影があった。
二人は急ぎのようであるが、物音は立てずに走っている。
??「はっ…はっ…」タタタ
先頭を走る人影は石畳を忙しく駆けると、その途中で急に方向を転換し、同じく固いレンガ作りの家屋の路地裏へと飛び込んだ。
白いローブの裾は後を続く彼女の目印になったことだろう。
??(こっちだ!来い!)
路地裏に隠れるようにして飛び込んだ人影はわずかに路地に顔をのぞかせ、もうひとりの影を呼び込む。
魔術師(は、はい!)
もう一人の影も吸い込まれるようにして、鼠のように狭いそこへと飛び込んだ。
果物を詰め込むための木箱の山で狭まった路地裏の更に奥へと二人は進む。
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