689:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/10(土) 02:11:30.65 ID:W/yi8QML0
どこかの国のどこかの街道。
商人のための街道には、無数の大きな鳥の足跡が刻まれ、深く太い轍がどこまでも続いている。
隣には、徒歩の旅人のために設けられたまっさらな道もあるのだが、そこは馬車道とは違い、ほとんど荒れてもおらず、綺麗なままだった。
前にも後ろにも人影のない、どこまでも続く歩道。
歩道を侵食する半分紅の差した芝を左足で踏みながら、一人の旅人が歩んでいた。
青年「……」
異様な男だった。
足取りは重く、何度も土を摺りながら、さながら砂漠をゆく水を求める者のような危うさで、ゆっくり歩んでいる。
背中には長い棒を背負い、その先端は古い包帯で厳重に巻かれている。それはおそらく槍であろう。
白い短外套の裾はゴーストを連想させるようにボロボロにほつれ、歩くごとに揺らめいた。
そして、艶のない白い髪。様々な要因が、彼の「只者で無さ」を表していた。
また、危うい足取りは、通りかかった商人の馬車を止めるほどにも目立っていた。
今も一台の馬車が停まり、中から鹿撃ち帽を深く被った男が顔を出す。
商人「おい、あんちゃん大丈夫か?」
青年「……」
白髪の彼は言葉に応えず、ただ何かしらぶつぶつと呟きながら、変わらず虚ろに歩き続ける。
商人「なんだあいつは……下向いて、うわ言みてえに」
商人「違法薬でもやってんのか?……ったく、最近の若い奴はすぐに薬に逃げるのか」
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