198:1 ◆H0UG3c6kjA[saga]
2012/01/03(火) 00:07:14.33 ID:Tj4M2rQZ0
目を覚ますと、朝になっていた。
周囲の状況から見て、どうやら青ピの部屋、ベッド上の様だ。
とりあえず、死んではいない。
垣根「……」
両脚の太腿半分から下がなくなっていること以外には、何も変わり無い。爽やかな朝だ。
昨日の出来事(といっても夕食の途中眠くなって寝るまでだが)は、全て覚えている。
予測するとするならば、青ピは俺に強力な睡眠薬を飲ませ、意識を失っている間に脚を切断した。
眠っている俺を連れ出して街中に出て事故にあった、という馬鹿らしい可能性もあったが、それはまず無いだろう。意味不明だし。
青ピ「…」
垣根「起きてたならちゃんと目開けろよ。狸寝入りしてんじゃねぇ」
青ピ「…ごめん、な」
垣根「…別に、怒っちゃいねぇよ。悲観してもいない。何か理由があったんだろ?」
青ピ「帝督ちゃんを、誰にも盗られたくなかった、から」
垣根「馬鹿だよな、オマエ」
青ピ「………」
垣根「こんな事しなくても、俺はオマエしか好きじゃねぇよ」
青ピ「…昨日の、白い髪の」
垣根「第一位か。…昔の知り合いだ。やましい事は何もねぇな。あいつが今すぐ死んでも、何のデメリットも悲しみもない」
青ピ「……今、何考えとる?」
垣根「…これでオマエは、俺を捨てられなくなったな、と思ってるだけだ」
青ピ「え…」
垣根「人一人の両脚切断しやがったんだ、まさか責任取らずに夜逃げしねぇよな?」
青ピ「…ボク、最低な事したのに…どうして」
垣根「昨日のシチューに薬が入ってたことくらい、気付いてた」
青ピ「…」
垣根「あからさま過ぎんだよ、オマエ。笑うかと思った。毒だとも思ってた。それでも、」
青ピ「…っ」
垣根「それでも、オマエになら殺されても構わないと思ったから、昨日のシチューを食べたんだよ」
泣きそうに顔を歪める青ピに、俺の方が申し訳ないような気分になってくる。
この優しいこいつが、俺の脚を切断するなどというおぞましい行為に至るまで、どれだけ悲しんだだろう。苦しんだだろう。
そう思うと、ムカつきすらしない。仕方がない、不可抗力のような気もする。
ぐしゃぐしゃに歪んだ顔を見ると俺まで落ち込みそうで、とりあえず視線を外して抱きしめた。
両脚が無くなって困るのは、幻視痛が予想されるだけだ。それさえなければ、青ピさえいれば不便は無い。
最悪能力を駆使すれば家の中で生活する事はさほど難しくない。青ピと一緒に外に出る時は車椅子を借りればいい。
死んだ訳じゃない。何も問題は無いはずだ。
どのみちこの家から出る事は今までもこれからもほとんど無い。
…もしかしたらこの感情は、ストックホルム症候群の症状の様なものなのかもしれない。
それでも構わない。青ピはこれで他の人間に目移りできなくなる。絶対に。
―――罪悪感で、人は縛っておける。
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