75:一年中が田上の季節[sage saga]
2011/10/03(月) 09:26:23.42 ID:Ay6ywUVh0
唯は律と戦うにあたって、あえて接近戦を選んだ。恐らく律の攻撃で最も怖いのは、剣戟そのものではなく、その派生である真空の刃であると、律の話からそう判断していた唯は、それを防ぐために彼女の剣を避けるのではなく受け流す戦法を取った。
律(かのじょ)の攻撃は、確かに凄まじく迅く、重く、そして力強いものだった。だが、ただそれだけだった。
彼女の剣は、駆け引きもフェイントも、相手の動きを見切る事も何も無い、只の力任せの思いのまま振り廻すだけの剣戟。爪剣の形状や特性を活用するなら剣戟を受け止められても、そのまま相手の武器を支点に(りよう)して刈る攻撃に移行する事も、相手の武器を絡め獲ると言った様々な攻撃のバリエーションも充分考えられるのだが、彼女の剣撃はただ撃つだけの単純な、まるで子どものチャンバラごっこそのもので、およそ剣技、剣術と呼べる様なシロモノでは無かった。
唯<いける!>
唯は、律の最初の一撃(けん)を受けた瞬間そう確信した。と、同時にとても哀しくなる。オセという柱(そんざい)は、凶暴な性格のジーニアスである事は確かだが、だが勿論それだけではない。こと戦闘能力に於いては、悪魔(だてんし)の中でも上位に数えられる存在である筈だった。その加護を受けている筈なのに、この様な力任せの攻撃しか出来ない。と、いうことは、
唯<律っちゃんは、ジーニアスの加護(ちから)を一部しか受けてはいない>
と、唯は結論付ける。
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