25: ◆3/LiqBy2CQ[sage]
2011/09/15(木) 20:21:53.21 ID:+wTNpPwyo
紬「……私と、両想いだった、って知ってしまったこと……?」
それなら辻褄は合う。両想いだと知ってしまったあの日から、唯ちゃんは毎日手首を切っている。
何故それで手首を切るのか、なんて考えたくもないけど、でも容易に予想はついてしまった。
好きだった相手と両想いだったなら、告白しなかった過去の自分を責めるのが道理だから。
告白していれば結婚することもなかったかもしれない。
告白していれば楽しい毎日を過ごせたかもしれない。
告白していれば後悔することなんてなかった。泣くことなんてなかった。
私は唯ちゃんと両想いだったという事実に、一筋の光明を見出したけれど。
唯ちゃんは逆に、その事実に後悔しかしなかった。自らを責めることしかしなかった。
私は唯ちゃんと再度仲良くなることで、何もない日々に対する癒しを、安らぎを手に入れたけれど。
唯ちゃんは私と再度仲良くなっても、所詮は不倫相手止まり。告白していればもっと先に行けたかもしれない、という後悔ばかりが余計に大きくなっていく。
愛し合う関係になったことで、私は満たされたけれど。
唯ちゃんの心は、いつもあと少しのところで満たされない。満たされることは永久にない。
人として求める至上の幸福を、それを手に出来る千載一隅の機会を逃したことを、唯ちゃんは死ぬまで悔いて生きなければならないのだ。
紬「そん、な……」
……なまじ、今になって私と心が通じ合ってしまったが故に、余計に。
紬「いや……そんな……ごめん…私は……そんな、そんなつもりじゃ……!」
……きっと唯ちゃんは、今夜も手首を切るのだろう。
あの時に願っておけばよかったと、一歩踏み出しておけばよかったと、自らを責め、悔いながら、自らを傷つける。
私の前では笑顔だけを振舞って、残りの感情を、涙も苦しみも悲しみも絶望も全て、自分の手首にぶつけるのだろう。
唯ちゃんは、きっともう壊れている。
唯ちゃんにだけは深いところの弱みを見せていた私とは違い、唯ちゃんは誰にも弱みを見せない。誰の前でも常に笑顔でいる。
唯ちゃんが精神的に強くなったわけじゃない。誰かといる時は、常に片方にしか針が振れなくなってしまっているんだ。
……当然だよね。唯ちゃんを一番傷つけた人が、唯ちゃんが心から信頼している私なんだから。
……私のやったこと全てが、私の存在そのものが、唯ちゃんを苦しめる。
私がいるから、守らなければいけない人が、自らを傷つける。
紬「……なぁんだ……」
私が、唯ちゃんの世界を壊したんだ。
紬「……っ……ふふっ……」
バカみたい。
紬「ははっ……あはははっ!!」
くだらない毎日。汚らしい人間。ロクでもない世界。そんな風に、全てに失望してきたけれど。
――何よりも救いようがない奴が、気づかないほど身近に居たんだ――
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