過去ログ - 一夏「鈍感なフリをするのに疲れた」
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650: ◆sWqJINogT.
2011/11/24(木) 02:25:37.94 ID:k1DK6tElo

 「もう2週間かぁ」

 千冬姉の部屋での生活が始まって既に13日が経過していた。工事も順調だったらしく、予定通り明日から自分の部屋を使えることになりますよと山田先生が伝えてきた。
 結局俺の……というか千冬姉部屋に侵入してきた猛者はラウラだけだった。他のみんなはまず鍵すら開けられなさそうだけどな。箒なら木刀で破ることが出来るかもしれんが。
 その分食堂や教室での会話時間も増え、さらに休日のお誘いも多かった。
 たまには実家に帰って掃除とかしなきゃならないから断ったんだけどさ。

 この部屋で過ごす機会はもうないだろう。
 つまりこの部屋を整頓することもなくなるのか……あ、ちょっと不安になってきた。ちゃんと掃除しろよ? と言ってやろう、そうしよう。

 1週間という中間地点を折り返し2週間というタイムリミットが近づくにつれ、千冬姉の表情が少しずつ暗くなっていったのが気にかかる。常人にはわからないけれど姉弟だから、長年ずっと一緒にいたからこそ気づく違和感だった。
 そうだよなぁ、服とか部屋の整頓とかを甲斐甲斐しくしてくれる弟がいなくなったら全部自分でやらなきゃいけないのだから無理はない。……んん? 待てそれはおかしい、本来なら自分でやるべきことであって、いやむしろ俺が細かくチェックしすぎてるのか―――

 「一夏」
 「おわっ!?」

 うおーびっくりした!

 「戻ってたんなら言ってくれよ千冬姉……心臓に悪い」
 「……」
 「あの、千冬姉?」

 返答はなかった。俯き気味なせいか前髪が顔にかかり、表情がわからない。

 「一夏……」

 そのままの状態で俺が腰かけているベッドに向かってくるのは、正直ちょっと怖い。

 「どうしたんだよ。体調でもわる―――ッ!?」

 ……え?
 一瞬何が起こったのかわからなかった。よく見てみると千冬姉が俺に覆いかぶさっているのがわかる。

 「……私は」
 「え?」
 「私には、魅力がないか」
 「……?」
 「私では……ダメ、なのか」

 私の、私が、私では―――。
 俺の返答を求めているようでもあるが、独白のようにも聞こえる言葉が次々と吐き出されていく。

 「よくわかんないけど……千冬姉は綺麗だし強いし格好いいしその、女性としてもとても魅力的だと思うよ」
 「……そう、か」

 僅かに吊り上った口角。ふ、と微笑んだ気がした。

 「それで、これはいったい―――」

 なんなのか―――と言うつもりだった。
 けれど。

 「んっ……!?」




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