820:ブラジャーの人[saga]
2012/02/15(水) 21:11:42.13 ID:hHAsBREZ0
「遅ェな…」
「えぇ…、ちょっと様子を見て参ります」
とっくにダークブラウンのスーツに着替えて、打ち止めを待つこと十分以上。一方通行はソファに座って一人ごちる。急かさせたつもりはなかったが、そばにいた女性店員が、打ち止めがいるであろう奥の部屋へと様子を見に行ってくれた。
一分後、急ぎ足で戻って来た店員は、
「一方通行様っ、もう少々お待ちくださいませっ。今良いところでございます」
「あァ?良いところって、オイ」
高級ブランド店で、この接客はどうなのだろうか。店員はろくに返事もせず背中を見せて離れてしまった。
「……申し訳ありません。また当店の従業員の悪いクセが出てしまったようでございます」
「悪いクセェ?」
「はぁ、若い女性がお客様の時には特に…」
いつの間にか横に立っていた店長。(イタリアのブランド店だが)英国紳士のイメージを絵に描いたような口髭を震わせて溜息をつく。
「私も幾度か注意したのですが、いやはや、情けないことにどうにも…。しかし、お連れ様の反応がすこぶる良いものですから、もう好きにさせることにしたのです」
「よく意味が分からねェンだが」
「先程の者が告げたとおりでございます。もうしばしお待ちを…」
うやうやしくおじぎをした店長も席をはずし、今度こそ一方通行は一人になった。テーブルの上で、冷めかけたコーヒーの湯気が揺れていた。
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