過去ログ - 士郎「人の為に頑張ったヤツが絶望しなきゃいけないなんて間違ってる」ほむら「……」
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922:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga sage]
2012/08/05(日) 09:25:13.01 ID:NLZutGxV0
Interlude


「はあ、はあ、はあ―――」

木々が生い茂る暗闇の中、肩で息をする一人の少女が居た。
彼女の名は巴マミ。
見滝原の街を守護する、誇り高きあ正義の魔法少女。

―――否、かつてそうであった者。
彼女は戦いを恐れ、死を恐れ、それまでの自身を裏切ってしまったのだ。
そこにはもはや、誇りや正義などは微塵も残ってはいない。

「ここ……どこだろ……」

光は彼方に僅かばかり。
当然であろう。
少女の脚力たはいえ、まる二日間走り続けてたのだ。
見滝原からは遥かに離れ、人里さえもとうに過ぎ去った。
人の手こそ入ってはいるものの、誰一人として存在しない県境の山奥。
そこがどこなのか判別する手段など、手ぶらのマミに持ち得る筈もない。

「まあ……どこでもいっか……」

とすん、と腰を下ろすマミ。
膝を抱えて座り込み、彼方にある故郷へと視線を向ける。
……当然ではあるが、見滝原の街がその目に届く事はない。

「明日、ワルプルギスの夜が現れる。
 放っておいたら、きっとたくさんの人が亡くなる……」

それは確定された未来だ。
原因に介入がなければ、結末は変わらない。
それを変えようというならば、ワルプルギスの夜と戦うしかない。
だが、その結果に出来る事は幾人かが避難する時間を稼ぐ程度。
しかしながら、そのリスクとしては落命の可能性さえある。
そのようなハイリスクローリターンの戦いを避ける事を、いったい誰に非難できようか。

「最低だ、わたし……。
 戦わなきゃいけなかったのに、みんなを守らなきゃいけなかったのに……逃げちゃった……」

だけど一人だけ―――他ならぬマミ自身がこれを許さない。

「今からでも引き返す……?
 ムリよ、怖い……わたし、死にたくない……」

震える体を押さえつけるマミ。
彼女は人一倍死を恐れる。

眼前に迫った確かな死。
それに足掻く事も抵抗する事も出来ず、されど意識を手放す事も許されない感覚。
普通の人間ならば心が押し潰されるのが道理であろう。
だが、マミに生きる理由を与えていたのは戦いだった。

「でも、戦わなかったら……わたしに、生きてる意味って……」

事故から生還した際のサバイバーズギルト。
救えなかった両親。
見捨ててしまった小さな命。
積み重ねられた強迫観念(トラウマ)がマミを正義の魔法少女として戦わせてきた。
そして何の皮肉か、今の彼女をかろうじて“巴マミ”であり続けさせているのもまた、彼女が体験してきた“死”であったのだ。


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