過去ログ - まどか「無限の中のひとつの奇跡」
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76:視点:真矢エリ ◆oQV5.lSW.w[sage saga]
2011/10/13(木) 02:48:52.39 ID:oIK4Qu7A0
肌を冷やす風の吹き荒ぶ中、今日最後の陽の光を浴びる、長い黒髪が撥ね上げられて
「殺し合いを、しましょう」
その言葉を合図に、二人の身体が光に包まれ、戦いの装束が纏われる。
明美先輩の両手には、それに加えて幾本もの黒い矢の束。
「――行くぜ」
佐倉杏子も、大きな赤い矢になる。
彼女が先輩に向けて放たれると同時に、赤い鎖の格子と、白い羽毛の壁が現れ
日常と、戦場が、隔てられた。
迎え撃つ黒い矢の雨は、しかし槍の一薙ぎに全て打ち落とされ
繰り出された槍の柄は、しかし器械体操の感覚で軽くあしらわれる。
赤と黒、二人の長髪が、陣風の中でそれぞれの我を主張し
紫と紅、互いの魂が、夕闇の中で宿す炎をぶつけ合う。
弓を介さず投げナイフの様に放たれる矢が
幾多の節で蛇のように曲がりくねる槍が
髪を、腕を、肩を、頬を、掠め合う。
「今日の貴方は、何をそんなに荒れているの?」
「――ふん、もうテメェらには、縁の無ぇことさ!」
目まぐるしい、攻防。
矢の弾幕を掻い潜り、足元から槍が撥ね上げる。
宙に逃げた身体の真芯を、穂先が狙い突く。
白刃取りでの倒立を、多節棍の渦の中に落とし込む。
刃元を蹴り、海老のように跳び退って罠を抜けつつ
また、矢の弾幕を張る。
夜が、迫ってきた。
戦場に舞う、二つの影を
日常に取り残された、三つの影が
哀しみと、怒りと、畏れと
三者三様の想いで、見つめていた。
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