過去ログ - 杏子「あいつが、居なくなった世界で」
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◆h4ONJivhRc
[saga]
2011/10/22(土) 19:51:09.38 ID:cc4KrkVu0
そうして、雨の中で握手を交わした。
さやかは、昔のあたし自身だった。
正義の魔法少女なんてものを気取って、それを誇っている。
先輩であるマミにうれしそうに、犬みたいに付き従っている。
でも、そうでないことは心のどこかでわかっていた。
危なっかしいだとか、見てられないだとか、そういうものでなく。
ただ、自分が逃げた場所に立ち続けているさやかが羨ましかっただけなんだ。
自分よりずっと強く世界と向き合うさやかに憧れていたんだ。
『……あたしは美樹さやか。よろしくね、杏子』
『よろしく、ねぇ……ま、長続きすればいいけど』
『む、何それ! あたしだってちょっとずつだけど、強くなってるんだから!』
『あーあー、そーかい』
『もう、信じてないでしょー!』
思えば、どうしてあの時素直になれなかったのだろう。
あたしが居場所になれていたら、さやかは消えずに済んだかもしれないのに。
どうして、暖かな手の感触が嬉しかったことを隠してしまったのだろう。
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